2020年11月21日土曜日

ボヘミアン・ラプソディ Bohemian Rhapsody (2018)

どっちかというと、Queen の音楽はそれほど好きな部類ではありません。
それでも "Bohemian Rhapsody" はいい曲だと思います。はちゃめちゃな展開にオリジナリティを感じます。

この映画は、1970年の Queen 結成から 1985年のライブエイドまでの期間の Freddie Mercury の人生の映画です。

この映画を見るまでもなく、Freddie Mercury は規格外の人間です。規格外だからこそ、あれほど成功し、人々の心を掴み、人からはみ出し、生き急いだのでしょう。
ロック・パフォーマーであることと、ゲイであり乱痴気騒ぎを繰り返したことは必然的に結びついています。
抑圧された移民の子である孤独な青年が、Mercury というスーパースターになりきり、エゴを全開していったのでしょう。
私はゲイの人の気持ちは分かりませんが、パーティで心が開放された、と Freddie が言っていたのは頭に残っています。

この映画は大ヒットしましたが、今見るとどうしてそれほどヒットしたのか分かりません。
やっぱ、音楽の力なのかなぁ。
ドラマチックなストーリーではあるんですが、それと音楽の力が結びついて、感動にまでなるんでしょうね。
そしてウェンブリーの大観衆の一体感。
音楽の感動って頭で考えるものじゃないです。

  • Director: Bryan Singer
  • Cast: Rami Malek, Lucy Boynton, Gwilym Lee...


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2020年11月3日火曜日

スワロウテイル (1996)

岩井俊二監督の問題作。役者がみんな若い、と思ったら、もう20数年前の映画なんですね。

三上博史の演技はわざとらしくてあまり好きじゃないんですが、この映画は逆にそれがうまくはまっているように思います。

舞台は日本の架空の都市で、移民たちが暮らす街。中国語、英語、日本語、それらを混ぜた言葉が入り混じる、まさに無国籍の世界です。"アキラ"を彷彿とさせる、近未来の無秩序です。

移民たちは、娼婦やゴミから売れるものを探す、といった最底辺の暮らしの中で、一獲千金を夢見ています。これは「活気」なんでしょうね。バブル後のまだ日本にあった「活気」、上を目指す熱気、ハングリースピリット、そんな残像がここにはあります。

今の日本にはない、懐かしささえ感じます。

今は中国なんでしょうね。

音楽は小林 武史とChara。主題歌 "Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜" はヒットしましたし、いい曲です。


監督:岩井俊二
出演:三上博史、Chara、伊藤歩、江口洋介、アンディ・ホイ、渡部篤郎、山口智子、大塚寧々、桃井かおり
音楽:小林 武史


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2020年10月25日日曜日

クリムゾン・タイド Crimson Tide (1995)

Steely Dan の "Deacon Blues"

"They got a name for the winners in the world
I want a name when I lose
They call Alabama the Crimson Tide
Call me Deacon Blues"

アラバマ大学のフットボールチームの愛称 "Crimson Tide"
原子力潜水艦アラバマから来たタイトルです。

キューバ危機のときソ連の潜水艦副艦長が反対して核魚雷が発射されなかったエピソードを下敷きにしたストーリーのようです。

№1と№2の相克。実際の組織でもよくありがちな事態だと思いますが、そうなると組織はズタズタになります。士気が下がり、組織の指揮命令系統が緩み、結果として組織能力が著しく下がります。
反対意見はみんなの前では言うな、と艦長は言いますが、そのとおりでしょう。

艦長も副館長も自らの信念に沿って行動しますが、どちらも正しいと言えます。
軍人として政治に介入せず、命令を実直に実行することに専念するのは正しい。
一方で、一市民として自分の正しいと思う行動をすることも正しい。

究極の選択の場面での究極の行動です。


Director : Tony Scott
Screenplay : Michael Schiffer, Richard P. Henrick
Cast : Gene Hackman, Denzel Washington


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2020年10月24日土曜日

ファースト・マン First Man (2018)

"La La Land" と同じ監督とは思えない、沈鬱な映画でした。

First Man とは、言わずと知れた Neil Armstrong のことです。

アポロ計画は人類の夢への到達と、計り知れない知性と努力の結晶です。
そんな映画を期待したのですが、まったく違うトーンでした。

ソビエトに先を越された失地回復のアメリカの状況。
発展途上の技術。
その中で、いつ事故に巻き込まれるかもしれない恐怖。
仲間の死の連続。
何度も起きる失敗。
家族の心配。

Neil Armstrong の職業はテストパイロットです。軍のテスト機をテストし、幾度も危ない目に遭いました。ジェミニ計画に選ばれてからも、完全ではない宇宙ロケットへ乗り込むということは基本テストなんでしょう。

人はパイロットであると同時にモルモットなんですね。

そんな中、Neil は冷静沈着な態度で、どんな危機にも対処していきます。船内の猛烈な揺れ、騒音、小さくみえる外部などが、その困難さを演出しています。

月のクレーターに投げ入れたのは、死んだ娘のブレスレット。

月への一歩も、感動というよりは、ミッション・コンプリート。


Directed by Damien Chazelle
Screenplay by Josh Singer
Based on the book by James R. Hansen
Cast : Ryan Gosling, Claire Foy, Jason Clarke


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海街diary (2014)

まさしく diary。4姉妹の日常です。

  • 自分たちを捨てた父の葬儀と、すずの引き取り
  • サッカーチームでの活躍
  • 花火大会と庭の花火
  • 母とのケンカ
  • 海猫食堂の女将の死
  • 不倫相手の海外移籍と別れ

など、それぞれの人生の変化や進化はありますが、ドラマチックに展開はしません。

是枝監督の共通項なのか、やはりここでも家族という「居場所」が描かれてます。

それとセリフの「アレ」ですよね。

全体的には、4人が美人なので、見ていて楽しくなります。


  • 監督・脚本・編集:是枝裕和
  • 原作:吉田秋生
  • 出演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、大竹しのぶ、堤真一、風吹ジュン、リリー・フランキー、樹木希林 他


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2020年9月21日月曜日

七つの会議 (2018)

「半沢直樹」「下町ロケット」の流れに沿った、池井戸潤作品の映画です。

監督は「半沢直樹」シリーズの福澤克雄で、香川照之、及川光博、片岡愛之助、立川談春、北大路欣也など、ほぼファミリー化している俳優陣の中で、異彩を放っているのが主人公八角役の野村萬斎です。狂言師というのがどれほど映画俳優と共通項があるのか知りませんが、この存在感は独特です。飄々というか、気が抜けているというか、コミカルというか。

小説は読んでいませんが、元々7話で構成されていて、1話ごとに主人公が違うようです。1話ごとに主となる会議があるのでしょうか。第1話の主人公である八角が、映画の主人公になっています。

池井戸小説のテーマである企業エンターテインメント、サラリーマン応援歌ですが、テーマがデータ偽装。免振ゴム、アルミ鋼材、排ガスデータと偽装は絶えませんが、この映画のような巨悪があることはほとんどないのでは、というのが僕の実感です。確率論と経済性の天秤、異常値は除くという組織の論理が優先され、同調圧力と前からこうやっていたという追認で、悪意なく偽装に加担していく構図でしょうね。誰も悪くないだけにたちが悪い。

小さなことでも疑問を言える、変えることに躊躇しないという風土が大切なんでしょうね。

監督:福澤克雄
出演:野村萬斎, 香川照之, 及川光博

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2020年9月20日日曜日

海よりもまだ深く (2016)

是枝裕和監督はすごい!

「万引き家族」ではニセ家族を描いて癒されましたが、2016年のこの映画は、共感というか代弁というか深く心に入ってきました。

テーマは「こんなはずじゃなかった人生」。

結婚の破局、小説家稼業の挫折。こうあったらいいな、と願いつつ現状に満足できず、空虚な毎日を過ごす人生。

母の小さな財産をくすね、父の骨董を質入れし、ギャンブルに身を焦がす。

母は息子を優しく見守りながら、日々の中に幸せがあることをさりげなく諭します。

元妻は次の人生へスタートを切り、男は決心したのかしないのか、また人生の続きを始める。

永遠に子どもなのだ。でもいつかは子どもから脱する時が来るのか、大人にならないといけないのか。「愛と青春の旅立ち」のザックはフォーリー軍曹のしごきによって大人に旅立ちましたが。

「海よりもまだ深く」は、テレサ・テンの「別れの予感」の歌詞の一部、台風の夜のラジオで流れたときに、母が「海よりも深く人を愛したことはない」と言います。そんな劇的な恋がなくても人生って味わえるのだと。

過去も未来もなく、今生きているこの瞬間こそが全てなのだ、というのは禅の教えだったでしょうか。

しかし「こんなはずじゃなかった」「どこで間違えたのか」と悔やみながら、そのどうしようもない続きの人生を生きて行くのも人間。「今を生きる」。

結局この映画でも癒されました。

監督:是枝裕和
出演:阿部寛、樹木希林、真木よう子、小林聡美


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2020年9月9日水曜日

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 Darkest Hour (2017)

ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男

ウィンストン・チャーチルの首相就任後1ヶ月の苦悩を描いた映画です。

チャーチルは電車にも乗ったことのない貴族であり、演説の得意な自信家であり、ドランカーであり、主戦派として描かれていて、事実そうだったと思われます。

首相就任の最初の演説は、自らの保守党から総スカン。保守党は、チャンバレンとハリファクスによる宥和派が主流だったからです。

ナチス・ドイツがベルギー、フランスへ進攻する中、いよいよ次はイギリスという状況になりつつあり、流石のチャーチルも、ドイツとの和平交渉へ動くかどうかを深く悩みます。

暗闇の部屋へ訪れたのは、ジョージ6世。気に食わないチャーチルに賛同します。そして市民の声を聞くようアドバイスします。市民の声に後押しを受けて、チャーチルは演説に臨みます。

政治家として1つ成長した、というストーリーかと思います。


ここでイギリスが踏ん張らなかったら、という意味で、チャーチルは自由主義陣営の英雄のごとく扱われます。宥和論の中で一人主戦論を張り、全体主義と戦った、と。

しかし、これこそ「勝てば官軍」ではないかと思ったりします。

日本も八紘一宇の理想を掲げて戦争をしました。僕が一番バカだと思うのは、パールハーバーを攻撃してから1年半後にはミッドウェーでターニングポイントを迎えておきながら、そのままま3年も戦争を続けた戦争指導者の無能さです。最後には本土玉砕を掲げて、市民を巻き添えにしていきます。

しかし、これはチャーチルと何が違うのか。チャーチルの勇気はかいますが、冷静さを欠いた判断だったかもしれません。多くの市民の犠牲を払いました。アメリカが参戦しなければ難しい局面に立たされていたでしょう。パールハーバーを一番喜んだのはチャーチルだったかもしれません。

歴史は勝者によって正当化されます。

日本は敗者になることによって、否が応でも反省することになりますが、おそらく勝者には反省はないでしょう。

Director: Joe Wright
Writer: Anthony McCarten
Cast: Gary Oldman, Lily James, Kristin Scott Thomas


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2020年8月27日木曜日

ローレライ (2005)

不思議な映画でした。

太平洋戦争の末期を舞台にして、女性の人間探知機が活躍するという、戦争ものとファンタジーがまじりあったおかしな世界です。

潜水艦"伊507"は、広島、長崎の後に東京に原爆が投下されることを必死に阻止しようとし、見事に成功させます。

話が突飛すぎて、なぜ東京に原爆が投下されようとしたのか、それがローレライ確保とセットになっているのはなぜか、首謀者は最後自殺するが、本当の狙いは何なのか、さっぱりわかりませんでした。

ただ、乗組員の、国を守ろうとする心意気だけは感じました。

原作:福井晴敏
監督:樋口真嗣
脚本:鈴木智
出演:役所広司、妻夫木聡、柳葉敏郎、香椎由宇他


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2020年8月14日金曜日

My Left Foot (1989)

脳性小児まひで左足しか使えない、画家で作家の Christy Brown の伝記映画です。
1989年というのは、僕が社会人になって2年目ですが、当時この映画のことは全く知りませんでした。
というか、話題にもならなかったんじゃないでしょうか。

場所はダブリン、レンガ職人の貧しい家の22人兄弟の10番目として Christy は生まれます。
周りに厄介者と思われていた Christy ですが、家族やドクターの支えで、文字を書き、絵を描くようになり、結婚をします。

まずは家族ですね。母は Christy を見守り、認め、たくさんいる兄弟は Christie を優しく応援します。
Christie 自身もジョークで家族を和ませます。
ドクターは発声方法を教え、本を与え、恋の味を教えます。

映画では、家庭のいいところしか描いていませんが、きっと大変な思いをしてきたことでしょう。

Christy が感情をうまくコントロールできないところも描かれてます。感情をコントロールすることの訓練が足りないのか、そもそもコントロールできない障害なのか。

Director: Jim Sheridan
Cast: Daniel Day-Lewis, Brenda Fricker 


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2020年8月10日月曜日

追憶 The Way We Were (1973)

Barbra Streisand の映画を見たのは実は初めてでした。
ユダヤ系で、ブロンクス育ち。ついでに強烈な民主党支持者。
この映画は彼女のために作られたようにも思います。

はっきりした顔立ちではあるものの、超美人ではないことが彼女の強みかもしれません。この映画のようなラブロマンスの場合、ちょっと応援したくなります。特に、相手が絵に描いたような美男子 Robert Redford ですからなおさらです。

この映画では主人公 Katie の一途さ、頑なさが印象に残りました。
真っ直ぐな目。
一方の Hubbell は、裕福な優男。彼の初小説どおり、母国同様イージーな人格です。

人間というものはお互いが持っていないものに惹かれるんでしょうか。しかし、その違いが許容範囲を超えると破局を迎えてしまう。
悲しいですね。

愛情はそれを乗り越えられない。

主義主張的には、イージーなアメリカという国に対して、キチンとものゴトをやろうとするカウンター・イデオロギーの対立を主人公たちに仮託しているみたいに見えます。

タイトルから言えるのは、過去形であること。あの日の恋。あの日の生き方。
基本的には、「マリーゴールド」と同じです。
誰にでもあるような過去は共感を得やすいんでしょうね。

Katie の強い眼差しは、大江千里の「REAL」を思い出させました。


Director: Sydney Pollack
Writer: Arthur Laurents
Cast: Barbra Streisand, Robert Redford, Bradford Dillman


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序の舞 (1984)

上村松園の生涯を描いたということで、かなり興味を持ってみました。

まあ、モデルであって伝記ではないので、かなり脚色が入っていることは素人目に見てもわかりました。

一方で、絵を描くことへの一途さは伝わってきました。

女の哀しさを表したかったのかもしれませんが、そんなことよりも、絵への一途さ、絵が優先順位が一番高かった人だったんだな、ということを強く感じました。

その代わり、絵を描くこと以外は不器用というか、うまく生きられないというか。

そりゃそうですよね。絵に集中してるんですもん。そんな人生カッコいいなあ。

絵以外では、男をうまく利用しているようにも取れ、一方で男からうまく操られているようにも取れ。物事の前後をあまり考えず、一方でしたたかさもあるような。

宮尾登美子の原作では、松園の母が主人公のようですが、映画では松園本人が主人公です。名取裕子、当時26歳、ほとんど映画経験のない中、いい感じを出しています。今の大御所感ゼロでフレッシュなのがグッド。

また、映画の全体的な雰囲気を作り出しているのが全編にわたって使われている京言葉です。はんなり、やんわり。今は関西弁の一型体みたいになってますが、こうやって聞くと、明らかに違いますね。京の街、京の言葉、京の人々、この映画を作った人たちは、京を描きたかったんだろうと思います。


監督:中島貞夫

出演:名取裕子, 岡田茉莉子、佐藤慶, 風間杜夫、水沢アキ


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2020年7月24日金曜日

愛と哀しみの果て Out of Africa (1985)

1910年代の植民地主義ありありの貴族ドラマを、なぜ1980年代に映画にしようと思ったのでしょう。
アフリカ先住民の土地を奪い、安い労働力として使い、文明を押し付ける。
動物を狩り、象牙を売る。
今ではNGのことですが、80年代は気分的に許されたのでしょうか?

原作は日本語タイトル「アフリカの日々」どおりのようですが、その日々の中から、映画ではデニスとのラブ・ロマンスにフォーカスを当てています。
孤高のマサイ族のようなデニスをアフリカそのものに見立てたところは、優秀な映画スタッフのなせる技でしょうか。
所有を求める主人公と自由を求めるデニスは、ヨーロッパとアフリカの関係です。

サファリの真ん中でも、ディナーにはワインという貴族の生活様式と、植民地主義の思考には共感できませんが、アフリカの大地の自然の映像は素晴らしいです。
一面に広がる緑の大地、動物の大群、夕暮れの空に背の高い木のシルエット、襲いかかるライオン。

植民地時代がめちゃくちゃにした世界を元に戻せずに、今でも後遺症に悩まされています。

監督:Sydney Pollack
出演」Meryl Streep、Robert Redford

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2020年7月22日水曜日

記憶にございません! (2019)

人間人生やり直したいと思うことはあるもの。
その気になればいつだって人生やり直せる、というメッセージはポジティブでした。

人とのしがらみ、こじれた家族関係、地位への未練、諦めた理想…
主人公は、石が頭に当たって記憶喪失になったことを契機に、人生を見事にやり直しました。
でも、記憶喪失はキッカケであって、本質ではありません。
何かのキッカケがないかと、言い訳を探すよりも、自分で一歩を踏み出そうよ、と言われてるみたいです。

コメディとしては、けっこう笑えました。コント的要素が強いんでしょうか。
こんな感じは確かに中井貴一なんでしょうね。頼りないところとビシッとしているところを演じ分けていて、貫禄です。

国会中継で放送を通じてストレートに妻にメッセージを言うシーンが、やっぱり一番印象に残りました。愛のメッセージは直球が一番。なかなか言えんけどね。
なかなかいい映画です。

監督・脚本:三谷幸喜
出演:中井貴一、ディーン・フジオカ、小池栄子、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市、吉田羊、斉藤由貴、ROLLY、濱田龍臣

公式サイト:https://kiokunashi-movie.jp

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オリエント急行殺人事件 Murder on the Orient Express (1974)

Agatha Christie のミステリーの1934年のミステリーの映画化です。

ストーリーは知っての通り。
全員が容疑者で犯人、誰がではなく、みんな、という奇想天外の謎解きですが、Agatha Christie らしく、それほど込み入った内容ではなく、人生ドラマを散りばめた、エンターテインメントですね。
こういうのって、みんな結論を知ってるわけですから、どのあたりをハイライトにするんでしょうね?

Sean Connery に Ingrid Bergman が出演していますが、なんと助演。しかも最重要の役回りではありません。なんとも贅沢な使い方です。
そんな中で、Poirot を演じた Albert Finney の怪演が光ります。かなりの変人の雰囲気を出し、独特のしゃべり口。それでいておかしみがある。

殺人事件という一見恐ろしい物語ですが、何かしら陽気さをもたらす映画でした。

ちなみに、オリエント急行殺人事件は2015年にフジテレビがテレビドラマ化して放送してました。
野村萬斎の探偵は、かなりこの1974年の Poirot の影響下にあると思います。
オリジナルでは、多国語の違いが謎解きのキーになっているのを、方言に置き換えたりしてよく日本語でやったなと感心します。

原作:Agatha Christie
監督:Sidney Lumet
脚本:Paul Dehn
キャスト:Albert Finney, Sean Connery, Ingrid Bergman, Anthony Perkins, Lauren Bacall, Jacqueline Bisset
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今そこにある危機 Clear and Present Danger (1994)

1992年の”パトリオット・ゲーム”の続編に当たります。パトリオット・ゲームで妊娠中だった子供は、赤ちゃんになってます。

“Clear and Present Danger” というのは、アメリカ大統領のセリフの一部です。
発言の意図を汲み取り、CIAは軍隊を動かした秘密作戦を実行していきます。
麻薬の取引と巨大な金が動く政治の動きと並行して、麻薬組織の下克上の動きが絡み、殺人、裏切り、襲撃、戦闘が発生していきます。
CIA内部の抗争と、大統領の思惑、一部の人間の単独判断、失策を表沙汰にしたくないための行動により物事がエスカレートしていき、フィナーレを迎えます。
Tom Clancy 的な映画でした。

見所はやはり、Harrison Ford のアクションでしょうか。基本分析官なので、自ら危ないことはしないはずですが、襲撃されたり、人の救出に向かったりと、所々で危険を顧みず大胆な行動に出ます。特殊訓練を受けてないはずなのに、よくまあ生き残れてますね。

原作:Tom Clancy
監督:Phillip Noyce
キャスト:Harrison Ford, Willem Dafoe, Anne Archer, Joaquim de Almeida, Henry Czerny, James Earl Jones
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空母いぶき (2019)

沈黙の艦隊は画期的で面白かったですよね。
まあ、その路線といえばその路線。
漫画では中国軍との戦闘のようですが、さすがにそれでは防衛省の協力を得られなかったのか、架空の新興国が相手となっています。その分ちょっとリアリティが薄れ、フィクション度が上がっています。

テーマは「戦争」を避けるための「戦闘」です。自衛隊という特殊な軍隊を持つ日本のギリギリの努力のシミュレーションでしょうか。
そこには最前線の自衛隊員の判断の1つ1つが重要な意味を持ちます。大変な仕事やなと改めて思います。こんなのは普段、日頃から考えて、体に染み込ませてないと判断を誤るでしょうから。

主人公のいぶき艦長秋津は、いつも余裕の笑みをたたえながら的確な判断をしていくスーパーマンです。マスコミも利用した社会を巻き込んだ動きも見せ、戦略眼、理念、判断、理解、先を読む力に長け、結局映画の中ではフォルトはありませんでした。
そういう意味では人間味がなく、正直共感できるキャラではありません。悩みがないんですね。
主人公以外の人間は、悩み、迷い、その時々の事件に一喜一憂します。まあ、その対比が楽しみどころなのかもしれません。

我々は戦争を放棄します、と宣言しても、周りが戦争を仕掛けてきたら国を守るために戦争をするしかありません。安全運転してても事故に遭うのと同じです。
コスモポリタン的な平和を憧れますが、一方で民族的独立・文化の維持、経済的意図、地域解決主義、イデオロギー対立など、分派的な動きも否定できるものではありません。その危ういバランスの中に社会がある以上、最終的な暴力手段を持っておかなければならないんでしょうね。警察のように。
それと、みんなで安全運転しましょう、と啓蒙していくことでしょうか。民主国家でない場合、国体を維持するためにどうしても軍隊を必要としますので、民主化を求めていくこととイコールなのかもしれませんが。なかなか難しいところです。

原作:かわぐちかいじ
企画:福井晴敏
監督:若松節朗
脚本:伊藤和典 長谷川康夫
キャスト:西島秀俊、佐々木蔵之介、本田翼、佐藤浩市、中井貴一、片桐仁、斉藤由貴、市原隼人

公式サイト→ https://kuboibuki.jp

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