「万引き家族」ではニセ家族を描いて癒されましたが、2016年のこの映画は、共感というか代弁というか深く心に入ってきました。
テーマは「こんなはずじゃなかった人生」。
結婚の破局、小説家稼業の挫折。こうあったらいいな、と願いつつ現状に満足できず、空虚な毎日を過ごす人生。
母の小さな財産をくすね、父の骨董を質入れし、ギャンブルに身を焦がす。
母は息子を優しく見守りながら、日々の中に幸せがあることをさりげなく諭します。
元妻は次の人生へスタートを切り、男は決心したのかしないのか、また人生の続きを始める。
永遠に子どもなのだ。でもいつかは子どもから脱する時が来るのか、大人にならないといけないのか。「愛と青春の旅立ち」のザックはフォーリー軍曹のしごきによって大人に旅立ちましたが。
「海よりもまだ深く」は、テレサ・テンの「別れの予感」の歌詞の一部、台風の夜のラジオで流れたときに、母が「海よりも深く人を愛したことはない」と言います。そんな劇的な恋がなくても人生って味わえるのだと。
過去も未来もなく、今生きているこの瞬間こそが全てなのだ、というのは禅の教えだったでしょうか。
しかし「こんなはずじゃなかった」「どこで間違えたのか」と悔やみながら、そのどうしようもない続きの人生を生きて行くのも人間。「今を生きる」。
結局この映画でも癒されました。
監督:是枝裕和
出演:阿部寛、樹木希林、真木よう子、小林聡美
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