2026年9月27日日曜日

マチネの終わりに (2019)

「マチネ」というのはこの映画を観るまで知りませんでしたが、昼公演のことだそうですね。
元は午前という意味だったそうですが、今では昼2時頃に始まる公演のことを指すことが多いようです。
午前でもなく、午後の真昼でもなく、夕方になる前頃の時間帯が「マチネの終わり」ということでしょうか。
人生で言えば、青春は過ぎて、中年に差し掛かる頃ですかね。

主人公はクラシック・ギターの演奏家ですが40くらい、師匠はもう老人になろうとしています。共演した若手ギタリストは20歳、ということで、その対比の中でも主人公の年齢的立場が象徴されています。
ギターと人生に迷い始めた頃に出会う男女。
恋愛をするには残り時間が微妙です。

ストーリーは、燃え上がる思いとすれ違いを軸に進んでいきます。
美男美女によるメロドラマで、あまり境遇に共感はできませんでした。
世界的ギタリストとフランスを活動拠点にしているジャーナリスト、という設定からして想像の範囲を超えています。

映画の中では「過去は未来の行動によって書き換えられる」というテーマが何度か繰り返し出てきます。
今苦しい思いをしていても、未来に過去を振り返った時、良かったと思えるかどうかは未来次第、ということです。
そういう考え方をすると、ポジティブに今を一生懸命生きようと思えるかもしれません。
そう言えば、先日観た同じ原作者の映画「ある男」も、過去、現在、未来の中で、変えられない過去に苦しんでいる人の話でした。


  • 監督:西谷弘
  • 脚本:井上由美子
  • 原作:平野啓一郎『マチネの終わりに』
  • 出演:福山雅治、石田ゆり子、桜井ユキ、板谷由夏、古谷一行


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蛇にピアス (2008)

舌へのピアス、刺青、SM、とかなり胸が悪く、もう一回観ようという気は起きませんでした。

若者の閉塞感、人生に希望を持てないどうしようもなさ。
塞がった状況からか、人体改造や痛みにリアルさを求める生活。
なんの光もなく映画は進み、終わっていきました。

吉高由里子の初主演映画、という点では観る意味があるかもしれません。
撮影時、物語の主人公と同じ19歳で、刺青と同じ飛龍的な勢いがあります。

リアルな実写でありながら、舌の描写はCGを駆使していて、金はそれなりにかかっていそうでした。
特に、ゲストが豪華。市川 猿之助、藤原竜也、唐沢寿明、小栗旬がほんとにちょい出してます。この辺りは、蜷川幸雄の人脈なのか、プロデューサー宇野康秀の影響力なのか。

映画の中に出てくる携帯は、まだスマホじゃないですね。iPhoneが日本で発売されたのは2008年らしいですから。

原作は金原ひとみで、彼女のデビュー作であり、芥川賞受賞作でもあります。


  • 監督:蜷川幸雄
  • 脚本:宮脇卓也、蜷川幸雄
  • 原作:金原ひとみ『蛇にピアス』
  • 出演:吉高由里子、高良健吾、ARATA(井浦新)


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ある男 (2022)

フランス映画のようなタイトルですが、短くてインパクトあります。
原作は平野啓一郎による2018年の小説で、読売文学賞も受賞しているみたいですね。

3年9か月一緒に過ごした夫が死んだが、名乗っていた氏名や出自が全く別人のものだったというミステリー。
夫婦たち、主に死んだ夫の人生に、調査を依頼された弁護士の人生、死んだ夫がなり代わっていた人の元恋人の人生が輻輳的に絡まってきます。
犯罪の匂いを振り撒きながら、結局は自分ではどうしようもない出自からの逃避にたどり着きます。
在日3世の弁護士は、死刑囚の父を持つ死んだ夫、老舗の温泉旅館の次男である成り代わられていた男の人生に共鳴していき....

名前や出自が嘘でも、今ここに実在していることが真実だということ、出自を乗り越えられない人もいるということが心に残りました。


  • 監督:石川慶
  • 脚本:向井康介
  • 原作:平野啓一郎『ある男』
  • 出演:妻夫木聡、窪田正孝、安藤サクラ、柄本明、清野菜名


https://k-hirano.com/a-man


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2026年9月21日月曜日

ルックバック (2024)

敬愛する是枝裕和が実写版映画を手がけたことがきっかけで、アニメ版を観てみました。

58分という短編映画で、ストーリーはごくシンプルなものですが、かなり心を動かされました。
2回観たんですが、2回目は涙が止まりませんでした。
主人公のピュアさが心痛い。

ルックバックですから、振り返るってことです。
映画の終盤は、この振り返りが描かれていて、まさにこれが「ルックバック」です。
ルックバックした時に、なんとなく感じてたけど、改めてのひたむきさ、ピュアさ、献身、自分の人生への自信を与えてくれたことを思い返す。
主人公はこれに応えるように、これからの人生を生きていくことでしょう。

ストーリーの中心になっているのが「絵」で、舞台の秋田・山形の風景描写が美しい!
また、エンドロールで、背景の景色が早朝から、深夜まで移り変わっていく様子は驚きでした。どうやって描いたんだろう?すごい!


  • 監督・脚本:押山清高
  • 原作:藤本タツキ
  • 出演(声):河合優実、吉田美月喜

https://lookback-anime.com


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2026年8月16日日曜日

ミーツ・ザ・ワールド (2025)

 杉咲花はすごいね。演技が。

「ミーツ・ザ・ワールド」は金原ひとみの小説の映画化です。
「ミーツ」ということは、一人称の彼女なのかな。まさに、杉咲花演じる主人公由嘉里が世界と触れていくストーリーです。

テーマは腐女子と歌舞伎町。
僕は世間に疎いので、「腐女子」が何なのか知りませんでした。でもひどくない?ネーミング。
腐女子としての自分に自信が持てずに、生きづらさを感じている由嘉里。
同じく生きづらさを感じているキャバ嬢ライと出会い、歌舞伎町に引き込まれていきます。

歌舞伎町は銀行に勤める由嘉里にとっては異次元の世界ですが、そこの住人は由嘉里のことを優しく迎え入れてくれます。というか、いいも悪いも何でも飲み込んでいくんでしょうね。
由嘉里の好きなアニメもみんな真剣に見てくれるのに感動しました。

歌舞伎町の人たちとの交流を通じて、他人は他人、自分は自分、自分で何が悪いんだ!と気づいた主人公は、自信を持ち始めます。その代わり、他人とは分かり合えないということにも気付かされますが。

久しぶりに心を動かされた映画でした。思わず2回続けて観てしまいました。

エンドロールで菅田将暉の名前が出てきて、え?と思いましたが、そういえばあの声....関西弁でしたね。


  • 監督:松居大悟
  • 脚本:國吉咲貴
  • 原作:金原ひとみ
  • 出演:杉咲花、南琴奈、板垣李光人、蒼井優、渋川清彦


https://mtwmovie.com


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2026年8月10日月曜日

木挽町のあだ討ち (2026)

源孝志監督・脚本ということで興味を持って観ました。

基本ミステリーなんでしょうが、観終わったあと何だが清々しい気分になるのは、源孝志監督のなせる技なんでしょうか。それとも永井紗耶子の原作によるものなんでしょうか。

原作「木挽町のあだ討ち」は2023年に山本周五郎賞、直木賞を受賞している時代小説です。いずれも大衆小説が対象のようですので、ピッタリかもしれません。

江戸後期の、江戸文化が最も栄えた時代に舞台を設定しています。
昨年の大河ドラマの蔦重のちょっと後の時代ですかね。
芝居小屋という世間的な「悪所」を舞台に、粋な人間模様を描きます。
木挽町は、舞台である森田座がある場所。そこに隣接する場所で起きた仇討ち事件の真相が徐々に明らかになっていきます。

まず最初の芝居小屋の明かりが川面に映る様や小屋から人が出てくる傘の模様、雪の景色が美しい。
この最初のシーンが一番の見せ所だからでしょうか。
一面の雪と血潮の対比と、仇討ちというドラマ性が人々の心を掻き立てる場面。

真相を探している柄本佑演じる主人公がいい味を出しています。腹が据わっているが、人の懐に入るのがうまく、ついつい身の上話などを話してしまう。

ミステリーというほど緻密に組み立てられておらず、「なんで?」と思わせるところは多くありますが、筋あかしはこの話の主題ではありません。

タイトルの「あだ討ち」と「あだ」がひらがなになっているのは訳があります。
仇討ちの筋書きでは「徒討ち」という字が当てられているからです。


  • 監督・脚本:源孝志
  • 出演:柄本佑、渡辺謙、長尾謙杜、瀬戸康史、滝藤賢一、山口馬木也、正名僕蔵、石橋蓮司、沢口靖子、北村一輝


https://www.kobikicho-movie.jp


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2026年7月5日日曜日

Project Hail Mary (2026)

人間と異星人がそれぞれの惑星を救うというちょっと奇想天外なSFです。というか、SFは元々奇想天外ですが。

原作は「オデッセイ(火星の人)」の Andy Weir。
「火星の人」は確か、火星に一人取り残される話だったと思いますが、今回も一人取り残されるという、同じパターンのものです。ただ、今回は一人ではなく、異星人との交流という点で少し進化しています。
ハードなSFというよりは、SFを舞台としたヒューマンドラマですかね。そういった要素が映画には必要でしょう。

太陽のエネルギーが弱くなっている原因の微生物をエネルギー源として、同じ境遇にありながらエネルギーが食われていない遠方の星に原因を探しに行く、というシチュエーション。
到着したところで、同じ原因究明のために来た異星人の宇宙船と出会い、意気投合。
コミュニケーションを取るうちに、友情が芽生えるというもの。

異星人を描くのは全く難しいなあ、といつも思います。
本来であれば、重力も大気成分も違う境遇で、おそらくコミュニケーション手段も大きさも生活環境の感知能力も時間感覚も全く違っているもののはずですが、映画上では友情が芽生えるほどの親近感を覚えさせなければいけない。
今回の異星人はかなり地球人とは違う外観と能力のようですが、人間と同じようなサイズで、指があり、大気を振動させて声を発し、数字っぽいものも認識するというもので、どうかなと思うところもありますが、家庭に受け入れられるためにはギリギリなのかもしれません。おそらく「E.T.」を参照したんだろうと思います。
映画「ロッキー」へのオマージュもありますね。

Ryan Gosling のユーモラスな演技が秀逸で、映画の中核となっています。人類存亡の危機というシリアスな状況ですが、コメディ・タッチ SF とでも言えるくらいの軽妙なやり取りが魅力です。

「Hail Mary」とは「マリア様!」という祈りの言葉で、アメフトの一か八かの試合終了直前のロング・パスの時に神に祈る「ヘイル・メアリー・パス」から来ているそうです。

  • 監督:Phil Lord, Christopher Miller
  • 原作:Andy Weir
  • 脚本:Drew Goddard
  • 出演:Ryan Gosling, Sandra Hüller, James Ortiz

https://projecthm.movie


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