2026年8月10日月曜日

木挽町のあだ討ち (2026)

源孝志監督・脚本ということで興味を持って観ました。

基本ミステリーなんでしょうが、観終わったあと何だが清々しい気分になるのは、源孝志監督のなせる技なんでしょうか。それとも永井紗耶子の原作によるものなんでしょうか。

原作「木挽町のあだ討ち」は2023年に山本周五郎賞、直木賞を受賞している時代小説です。いずれも大衆小説が対象のようですので、ピッタリかもしれません。

江戸後期の、江戸文化が最も栄えた時代に舞台を設定しています。
昨年の大河ドラマの蔦重のちょっと後の時代ですかね。
芝居小屋という世間的な「悪所」を舞台に、粋な人間模様を描きます。
木挽町は、舞台である森田座がある場所。そこに隣接する場所で起きた仇討ち事件の真相が徐々に明らかになっていきます。

まず最初の芝居小屋の明かりが川面に映る様や小屋から人が出てくる傘の模様、雪の景色が美しい。
この最初のシーンが一番の見せ所だからでしょうか。
一面の雪と血潮の対比と、仇討ちというドラマ性が人々の心を掻き立てる場面。

真相を探している柄本佑演じる主人公がいい味を出しています。腹が据わっているが、人の懐に入るのがうまく、ついつい身の上話などを話してしまう。

ミステリーというほど緻密に組み立てられておらず、「なんで?」と思わせるところは多くありますが、筋あかしはこの話の主題ではありません。

タイトルの「あだ討ち」と「あだ」がひらがなになっているのは訳があります。
仇討ちの筋書きでは「徒討ち」という字が当てられているからです。


  • 監督・脚本:源孝志
  • 出演:柄本佑、渡辺謙、長尾謙杜、瀬戸康史、滝藤賢一、山口馬木也、正名僕蔵、石橋蓮司、沢口靖子、北村一輝


https://www.kobikicho-movie.jp


Apple TVで入手

2026年7月5日日曜日

Project Hail Mary (2026)

人間と異星人がそれぞれの惑星を救うというちょっと奇想天外なSFです。というか、SFは元々奇想天外ですが。

原作は「オデッセイ(火星の人)」の Andy Weir。
「火星の人」は確か、火星に一人取り残される話だったと思いますが、今回も一人取り残されるという、同じパターンのものです。ただ、今回は一人ではなく、異星人との交流という点で少し進化しています。
ハードなSFというよりは、SFを舞台としたヒューマンドラマですかね。そういった要素が映画には必要でしょう。

太陽のエネルギーが弱くなっている原因の微生物をエネルギー源として、同じ境遇にありながらエネルギーが食われていない遠方の星に原因を探しに行く、というシチュエーション。
到着したところで、同じ原因究明のために来た異星人の宇宙船と出会い、意気投合。
コミュニケーションを取るうちに、友情が芽生えるというもの。

異星人を描くのは全く難しいなあ、といつも思います。
本来であれば、重力も大気成分も違う境遇で、おそらくコミュニケーション手段も大きさも生活環境の感知能力も時間感覚も全く違っているもののはずですが、映画上では友情が芽生えるほどの親近感を覚えさせなければいけない。
今回の異星人はかなり地球人とは違う外観と能力のようですが、人間と同じようなサイズで、指があり、大気を振動させて声を発し、数字っぽいものも認識するというもので、どうかなと思うところもありますが、家庭に受け入れられるためにはギリギリなのかもしれません。おそらく「E.T.」を参照したんだろうと思います。
映画「ロッキー」へのオマージュもありますね。

Ryan Gosling のユーモラスな演技が秀逸で、映画の中核となっています。人類存亡の危機というシリアスな状況ですが、コメディ・タッチ SF とでも言えるくらいの軽妙なやり取りが魅力です。

「Hail Mary」とは「マリア様!」という祈りの言葉で、アメフトの一か八かの試合終了直前のロング・パスの時に神に祈る「ヘイル・メアリー・パス」から来ているそうです。

  • 監督:Phil Lord, Christopher Miller
  • 原作:Andy Weir
  • 脚本:Drew Goddard
  • 出演:Ryan Gosling, Sandra Hüller, James Ortiz

https://projecthm.movie


Apple TVで入手

Respect (2021)

Aretha Franklin の幼少期から "Amazing Grace" の録音(1972)までを描く、伝記映画です。

1972年は彼女が30歳の頃ですが、1967年からの6〜7年くらいが人気の絶頂期と言っていいでしょう。
70年代後半からはヒット曲が出なくなり(それでもいい曲といい歌はいっぱいありますが)、80年代後半に復活ヒットは出ますが、シンガーとしては少し翳りが見えていました。

秀逸、唯一無二のシンガーですが、人気の絶頂期とシンガーとしての素晴らしさは時期が重なります。
鞠のように弾んで、スイングとグルーヴを生み出すヴォーカルは、才能としか言いようがありません。
主演の Jennifer Hudson はよく引き受けたものだと思います。

Aretha 自身でこの映画の制作を企画していたようなので、少し本人に都合よい脚本になっているのはしょうがないでしょう。
彼女に批判的な語り口の同じタイトルの本と合わせてみて実像に迫れるかもしれません。

彼女がチャンスを掴んだのは、夫の Ted が Jerry Wexler のアトランティック・レコードと契約し、マッスル・ショールズ・スタジオで録音をするようになってから。
Aretha のブルーズ志向のアレンジ能力も開花し、大成功をもたらします。いい曲を選曲し、いいアレンジをし、素晴らしい歌声を聴かせる。
Jerry Wexler のアーティストを尊重するプロデュース方針、Aretha の能力、山師の夫のマネジメントがいい回転をしてたんでしょうね。
しかし、その成功の裏では、夫の暴力、父との諍い、Aretha の精神の弱さとアルコール依存が併存する、脆い成功体制だったことが窺えます。
うまくいっているときって、そういうものかもしれません。


  • 監督:Liesl Tommy
  • 脚本:Tracey Scott Wilson, Callie Khouri
  • 出演:Jennifer Hudson, Forest Whitaker, Marlon Wayans, Mary J. Blige

Apple TVで入手

2026年4月4日土曜日

ダーティハリー2 (1973)

Magnum Force

Clint Eastwood の出世作 "Dirty Harry" の続編で、サンフランシスコ市警察の "Harry" Callahan が活躍するアクション・ムービー。

"Dirty" とまでは言えないものの、アウトロー刑事 Harry を今作でも Eastwood が好演しています。

自衛ではあるものの、結果的には結構な人を殺してしまうところが、"Dirty" です。

上にはへつらわないが、同僚には優しいヒーローです。正義感があるのかどうかは分かりません。

映像的には綺麗で、70年代の映像技術の高さに驚きました。

一方で、そんなこと考えないやろ、とか、そういう行動しないやろ、というちょっとリアリティのなさは70年代シナリオなのかも。同じアパートの女性がすぐ Callahan と寝ちゃうところなんか、あり得ん上にそのエピソードが何の意味あるんやろ、と思いました。


  • 監督:Ted Post
  • 脚本:Harry Julian Fink, Rita M. Fink, John Milius
  • 出演:Clint Eastwood, Hal Holbrook, Mitchell Ryan


Apple TVで入手

2026年2月8日日曜日

沈黙の戦艦 (1992)

Under Siege

昔見た時は、圧倒的な主人公の強さに圧倒され、快感を覚えたくらいでした。
同じ感覚が今観てもあるのかなと思い、再びみてみました。
結局、Steven Seagal は途中の銃撃戦で肩の辺りを少し怪我したのと、最後の決闘で額に切り傷を得たのみでした。

ストーリーは90年代初期にありそうな、やりすぎやろ系で、戦闘機は撃ち落とすわ、核弾頭を強奪するわ、トマホークを発射するわで、もう無茶苦茶です。
そういう意味では、リアリティがないのが救いです。
"Dr. Strangelove" も狂気と核の主題でしたが、こっちの狂気はおかしすぎます。こんなことは起きないでしょう。

主人公の行動も凄すぎますが、都合よく色んな道具が使えるのも笑えるくらいです。
溶接機に溶接グラス、衛星受信機に通信機、爆発に使うオイル缶にタイマー爆弾、爆弾製造もこの短期間でやり遂げます。特殊部隊にいたからって、そりゃ無理でしょ、って感じです。
しかも、この戦闘の間に恋も芽生える。

その完璧さが魅力の映画なんでしょうね。

ちなみに「沈黙の」は映画と全く関係ありません。当時日本で流行っていた漫画「沈黙の艦隊」からとったそうです。
Under Siege は「包囲下」という意味です。絶体絶命の状況から1人で戦艦を奪還するストーリーには合ってます。「海のダイハード」は確かに、って思います。


  • 監督:Andrew Davis
  • 脚本:from J. F. Lawton's "Dreadnought"
  • 制作:Arnon Milchan, Steven Seagal, Steven Reuther
  • 出演:Steven Seagal, Tommy Lee Jones, Gary Busey, Erika Eleniak


Apple TVで入手

2026年1月25日日曜日

GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊 (1995)

最近SFものが続いていますが、今回は押井守の傑作と言われている「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊 」。
これだけ有名なのに、僕は一切触ったことがなく、何の前情報も無く観ました。

人間と一体化したサイボーグが普通の世界を舞台としたアクションアニメですね。

1988年の「AKIRA」や1982年の「ブレードランナー」、1984年の「ターミネータ」からの影響が感じられます。
サイバーパンクでかつ舞台が香港(っぽい所)。
大友克洋が「AKIRA」で越えようとしたアニメの限界は超えている様に思います。背景の緻密さはすごい。アニメーション自体はそれほどでもありませんが。
また、1999年の「マトリックス」は似たような世界観を持っていることから、この映画の影響が想像できます。

全く予備知識がなくて情けないのですが、原作があったんですね。
士郎正宗による全3巻の漫画で、1989年から1990年にヤングマガジン海賊版(そんなのあったんですね。いわゆる増刊号)に連載されたものです。今買おうとするとメチャ高い。
その1巻目のサブタイトルが「The Ghost in the Machine」で、この映画の原作になっています。
おもろそう。


  • 監督:押井守
  • 脚本:伊藤和典
  • 演出:西久保利彦
  • キャラクターデザイン:沖浦啓之
  • 作画監督:黄瀬和哉、沖浦啓之
  • 原作:士郎正宗


Apple TVで入手

2026年1月13日火曜日

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター (2022)

「アバター」は劇場に観に行きました。3Dサングラスつけて。
当時3Dが流行ってて、家のテレビも3D対応のを買いました。
今では何の意味もないけど。

「アバター」の続編が出ているのも知りませんでした。
James Cameron は映画会社と「アバター」シリーズで5作作る契約をしているらしいので、今後も続々出てくるんでしょう。

「アバター」も最終的にはハッピーエンドなんですが、終盤に至るまでが苦しい感じが強く、観るにはちょっと気合いがいります。
この映画も同じで、気合い入れて見始めましたが、イメージ通りの苦しい展開でした。
前回は男女の恋の話でしたが、今回は家族愛の物語。より多くの共感を得ることができたでしょう。

ストーリーは王道なんですが、やはりその映像が驚きです。
今回は、舞台を森から海に移した分、水の表現が最重要になりますが、水面に映る光、水中の歪み、空からの光などの表現がリアルそのもの。
敢えて難しい表現が必要となる舞台を選ぶところが James Cameron なんでしょうね。
一つ一つの場面表現が、すでに芸術の域に達しています。
ソフトウエアの開発にすごい時間をかけたと聞きますし、膨大な制作費は開発や原画作成に費やされたことは想像がつきます。ヒットメーカーだけに許される金の使い方なのかもしれません。

前作はアメリカ先住民(インディアン)を下敷きにしていると思われますが、今回は海の民ということで、ニュージーランドのマオリ族がモチーフになっているようです。
自然と共生する先史民族と西欧文明社会の衝突という構図は、文明側の人が少なからず持っている贖罪の気持ちを代弁していると思いますし、鉱物資源や動植物資源のための紛争は現代の世界にも当てはまる警鐘です。


  • 監督 : James Cameron
  • 脚本 : James Cameron, Rick Jaffa, Amanda Silver


Apple TVで入手

2025年10月7日火曜日

炎のランナー (1981)

1924年のパリオリンピックでの陸上競技を舞台にした英国ドラマです。

主人公の2人のイギリス人が金メダルを取った他、ケンブリッジ大学のメンバーが活躍したようです。
イギリスすごいやん的ナショナル映画のようにも捉えることができます。「トップガン」みたいに。

舞台は1920年代初頭、ということで第一次世界大戦が終わったばかり。
イギリスは閉鎖的社会で、主人公の一人エイブラハムスはユダヤ人であることに悩んでいます。
民族的にも宗教的にも排他的な社会だったんですね。
もう一人の主人公リデルはスコットランド人で、キリスト教の伝導の道を目指しており、日曜日の競技を拒むなど宗教位忠実な人物。中世的意識がまだ多く蔓延っていたのが分かります。
ケンブリッジ大学では、プロのコーチを雇うなどけしからん、といったアマチュアリズムが堅牢で、なんとも生きづらい感じがします。

そう思うと、この時代の生きづらさは今の時代の別の生きづらさと大して変わらんのでは、とも思えてきます。
そういった生きづらい世の中でも、精一杯自分の生を生きようとする人たちの姿を描いているのかな。

"Chariots of Fire" というのは、映画の最後に教会で歌われている "Jerusalem" (エルサレム)の中の一節で、William Blake が作った詩の一部のようです。"Jerusalem" はいくつかのスポーツでイギリスの国家的に扱われている曲で、イギリス万歳的意味を与えたかったんでしょうね。

「炎のランナー」といえば Vangelis のサウンドトラックが超有名。主題曲 "Titles" はインストでありながらビルボードの1位となっています。
シンセサイザーによる音色とメロディが素晴らしい。ちなみにシンセはヤマハCS-80だそうです。


  • 監督:Hugh Hudson
  • 脚本:Colin Welland
  • 出演:Ben Cross, Ian Charleson, Ian Holm, Alice Krige

Apple TVで入手

2025年8月16日土曜日

舟を編む (2013)

辞書を作るという地味な作業を小説にしようと思った着想が素晴らしい。

エピソードは出版業界の「あるある」なんでしょうか。

2009年から2011年にかけて雑誌に連載し、2012年に本屋大賞をとって、早速2013年に映画化されています。

NHKで連続ドラマにもなっていますが、辞書を作るという13年間の小説ですので、ドラマは無理でしょう、と思いました。

オタク気質の主人公の成長物語でもあります。
辞書作りは向いてるとしても、女性とトントン拍子にうまくいくのは流石に「ない」と思いました。
男性の妄想が入っているのだと確信しましたが、作者は女性でした。こういう恋愛に憧れたりするんだろうか。女性ファッション雑誌に連載されてたようなので、あながち共感を得られてないとも思えない。というか、共感を得るだろうとの読みのストーリーのはず。

登場人物が、皆辞書作りに情熱を持っていて、爽やかな視聴後感です。


  • 監督:石井裕也
  • 原作:三浦しをん
  • 出演:松田龍平、宮﨑あおい、小林薫、オダギリジョー、加藤剛 、黒木華


Watch on Apple TV

2025年6月8日日曜日

半落ち (2004)

容疑者が完全に罪を認めるのが「完落ち」、一部認めるのが「半落ち」。

アルツハイマー病を患う妻を絞殺した警部の、殺人後の2日間の行動を追うミステリー。
警察、検察、弁護士、記者が真相を追います。
結局、犯人の警部の誠実で真摯な人柄が浮き彫りになっていく、という展開です。

ちなみに、刑事、検察官、弁護士は年齢は違うものの、同期という設定です。
警察での捜査、検察の調査を経て、裁判で真実が明らかになっていきます。
小説に忠実に映画化しようとしたせいか、映画の2Hの尺では舌足らずのところがあります(検察と警察の裏取引などは何のことか分かりませんでした)が、全体のストーリーにはあまり影響がないように思います。

今から20年前の映画ですが、ずいぶん時代が違うなと思いました。というか違和感を感じるくらいでした。
まず、けっこうな人がタバコを吸っている、事務所や公共の場でも。
ワープロはあるけど、デスクにはパソコンはない。
職場の中での上意下達が激しい。えらそうに命令口調。
女性は男社会に従属してる感じ。妻は夫に頼っており、家の中のことをやる存在。
この20年間で随分社会の規範は変わったもんだなと思います。

テーマの一つが認知症ですが、これは他人ごとではありません。時代が変わっても変わらない課題です。


  • 監督:佐々部清
  • 脚本:田部俊行、佐々部清
  • 出演:寺尾聰、柴田恭兵、伊原剛志、吉岡秀隆、原田美枝子、樹木希林、鶴田真由

Watch on Apple TV

2025年5月25日日曜日

ミッドナイト・ラン (1988)

Midnight Run

真夜中の逃亡、的なタイトルかと思ってましたが、もちろんそういう意味も掛けてるんでしょうが、「簡単な仕事」というスラングみたいですね。一晩で終わる仕事ってことなんかな。
日本語訳のセリフの中でも「チョロい仕事だろ?」と出てきます。

その「チョロい仕事」がだんだん大変なことになって、人生のドラマが垣間見えてくるというストーリーです。
ベースはコメディタッチなので、シリアスな内容なんだけど、ストーリー展開が緻密すぎず、まあ気楽に観れます。
サウンドトラックも Huey Lewis 的な少し開放的な感じです。

イマイチ最初に入ってこなかったのが、保釈保証業者。日本ではあまり聞かんもんね。
被疑者に代わって保釈金を立て替える業者らしいです。その被疑者が保釈金を踏み倒そうとするので、それを捕まえるのがバウンティハンターらしいです。なので、保釈保証業者からの依頼で動くんですね。
古くは賞金稼ぎなので、懸賞が掛けられた被疑者を捕まえる、ということなんでしょうか。

主人公はそのバウンティハンターで、行方が分からなくなった保釈人を5日以内に引き渡す条件で仕事を引き受けます。行方をくらました理由は、保釈金の踏み倒しではなく、裏社会のボスから逃れるため。
主人公は、凄腕で、すぐに保釈人を見つけますが、そこから色んな展開があり、ドタバタが続いていくというもの。

アメリカンないい映画だと思いますが、映画を引き立てているのはやはり Robert De Niro でしょうね。
様々な役を驚くような演技で魅了する最高の俳優ですが、こういったコメディタッチの映画でも絶妙な演技をしてます。


  • 監督:Martin Brest
  • 脚本:George Gallo
  • 出演:Robert De Niro, Charles Grodin, Yaphet Kotto


Watch on Apple TV

2025年5月18日日曜日

マネーボール (2011)

Moneyball

何回目かに観ました。好きなんです。
お金のない弱小チームが、統計を使って、評価の低いプレイヤーを安くスカウトし、チームづくりをしていくところが、なんだか自分の所属している会社やカープにダブらせて観てしまいます。

弱小といっても、ストーリー的に面白く言っているだけで、オークランド・アスレチックスですから、実際は名門チームです。
お金がある、なし、でいうとオーナー次第かもしれませんので、アメリカの事情はよく分かりませんが、オークランドですので、サンフランシスコですよね。客の入りが悪いってことはないと思います。
実際、この物語の10年ほど前には、José Canseco、Mark McGwire を擁して絶頂期を迎えています。

この物語は2001年シリーズ後に、Johnny Damon、Jason Giambi、Jason Isringhausen をFAで失うところから始まります。
スカウトは、Giambi の穴を埋める選手を必死に探しますが、正直それは無理というもの。いたとしても高額の年俸が必要になります。
で、主人公の GM Billy Beane は インディアンズから引き抜いたピーターの統計手法に賭け、素質より実績数値を重視する戦略をとり、安い選手を獲得することにします。他の球団では見向きされない選手を。
例えば、Jason Giambi の弟の Jeremy Giambi や Scott Hatteberg。Jeremy Giambi は素行が悪いことで有名で、打撃センスは兄とは程遠く、Scott Hatteberg は投げられない捕手。でもいずれも出塁率は高い、という感じです。

アウトを増やすバントはせず、糖類やヒットエンドランは成功確率の割には得点に結びつかないとして、やらない。
比較的、原作に忠実に映画化していますが、やはり情報量としては本の方が多いです。

2Hの映画では、Billy Beane の人生に焦点を当てていますが、全てを描き切れるわけではありません。
でも、エッセンスはよく分かります。

Billy Beane の目指す世界は、スモール・ベースボールの否定。足で稼ぎ、犠打でチャンスを作り、相手にプレッシャーをかける、といった日本の得意とする野球です。それよりも、四球やエラーで出塁し、ヒットや長打で点を取る野球ですから、大谷の世界に近いかもしれませんね。そんな中イチローの活躍は一石を投じたことでしょう。


  • 監督:Bennett Miller
  • 原作:Michael Lewis "Moneyball: The Art of Winning an Unfair Game" (2003年)
  • 脚本:Steven Zaillian, Aaron Sorkin
  • 出演:Brad Pitt, Jonah Hill, Philip Seymour Hoffman


Watch on Apple TV

2025年5月17日土曜日

快盗ルビイ (1988)

公開当時に映画館で観て以来、30数年ぶりに観ました。

小泉今日子は僕と同い年だから、21,2歳の頃でしょうか。コケティッシュな魅力を出しています。

正直、和田誠監督、というくらいしか覚えてなかったので、新鮮に観れました。
共演は真田広之だったのも、改めてそうだったんだ、という感じです。「ルビイ」の本名が「瑠美」だったことも。
真田広之もさすが俳優ですね。ダメ男くんを好演しています。

ほのぼのとしたラブ・コメディは、和田誠の絵のような、独特の感じを出しています。表現者というのは、絵を描いても、映画を撮っても、文章を書いても、ユニークな自分を表現しちゃうんですね。

改めて見てみると、主題歌は大瀧詠一の曲だったんですね。こちらも「まさに大瀧詠一」という曲。


  • 監督:和田誠
  • 原作:Henry Slesar 「快盗ルビイ・マーチンスン」
  • 脚本:和田誠
  • 出演:小泉今日子、真田広之、水野久美

2025年3月16日日曜日

影武者 (1980)

当時、黒澤映画の大作、と喧伝されていたので、少し構えてたんですが、それほど堅苦しいものではありませんでした。

信玄に影武者がいて、死後世間を欺いていた、という設定で、主人公は、その影武者で小泥棒の男。
姿形が似ているというだけで、逆さ磔の刑から救い出された下賎の者。
仲代達矢が好演しています。

そもそも全く違う境遇に放り込まれて大変な目に遭いますが、そこがこの映画の「おかしみ」があるところ。
唯一孫には見抜かれてしまいますが、人がいいのか孫に好かれるあたりが、ただの市民ぶりを感じられて、ほっこりするところじゃないでしょうか。

人間模様だけをクローズアップすればいいところを、結構戦闘シーンに時間を使っちゃってます。
これだけで予算数倍でしょうね。
時代考証的には、サラブレッドのような痩身の馬、天守付きの城郭、駕籠、バンバンの鉄砲劇等、違和感ありありですが、分かっていながら、という映画的な対応でしょうね。
特に今回は、海外向けでもあったわけですから。
黒澤ファンの Coppola、Lucas が海外プロデューサーとして クレジットされてます。すごいですね。

主役の勝新太郎が撮影初日で監督と衝突して降板となったので話題になったのかな。そういえばそんな噂聞いたことがあったような。
勝新の小物ぶりも見たかったなあ。


  • 監督:黒澤明
  • 脚本:黒澤明、井手雅人
  • 出演:仲代達矢、山﨑努、萩原健一、根津甚八、大滝秀治、隆大介、油井昌由樹、桃井かおり、倍賞美津子


Watch on Apple TV

2025年3月2日日曜日

遠い夜明け (1987)

Cry Freedom

この映画の原作本が出されたのが1978年。
この映画が封切られたのが1987年。
マンデラが解放されたのが1990年。
アパルトヘイト廃止宣言が出されたのが1991年。
アパルトヘイトが法的に廃止され、政権が変わったのが1994年。
この物語が始まった1975年から数えると20年近く年月を経ないと願いは叶えられませんでした。
実に「遠い夜明け」と言わざるを得ません。

1980年には Peter Gabriel が "Biko" という曲を出し、翌年には The Specials が "Nelson Mandela" を歌い、E Sreet Band の Little Steven Van Zandt らが1985年に Artists United Against Apartheid として “Sun City" を出し、同じ年に Stevie Wonder は "It's Wrong" を出しました。

そもそも1960年代にNelson Mandelaや Walter Sisulu や Robert Sobukwe らが投獄され、Thabo Mbeki らが国外に逃亡しして下火になっていた反アパルトヘイト運動を再活性化したのは、この物語の主人公とも言える Steve Biko の活動によります。
彼は学生運動を組織化し、黒人の意識向上を求めました。反白人主義ではなく、白人リベラルからの自立を主導していたようです。
政府による活動禁止後の動きはこの映画の中でもいくつか取り上げられています。
映画の中でも描かれた彼の葬儀には2万人が集まったと言います。

その彼の死を無駄にしないために、新聞の編集長だったもう1人の主人公 Woods は死の真相を暴く原稿を携えてイギリスへ逃亡しますが、この映画の後半はその逃亡劇が描かれています。これ、そんなにいらないんじゃないの?と思いましたが。

反アパルトヘイト運動の中で多くのリーダーが亡くなりましたが、彼もその1人です。
生き残った人が、アパルトヘイト後の政権でリーダーを務めていますが、生き残った人だけが英雄ではなく、こっやって犠牲になった人たちこそが英雄なんだろうと思います。
生きていれば、新政権の中で必ず要職に就いた人だったろうと思います。

  • 監督:Richard Attenborough
  • 脚本:John Briley
  • 原作:Donald Woods “Biko"(1978), "Asking For Trouble"(1981)
  • 出演:Kevin Kline, Denzel Washington, Penelope Wilton


Watch on Apple TV

2025年1月5日日曜日

パルプ・フィクション (1994)

Quentin Tarantino 監督の意味のあるような、ないような映画。

ギャングの周辺に起きるできごとをオムニバス形式でつないでいます。

意味があるとすれば、主人公の一人が殺しの前に言う、旧約聖書の一節くらいですが、それも Tarantino が好きな日本映画の冒頭のナレーションらしいです。

オムニバスなので展開が速く、ドラッグ、銃、レイプ、ユーモアが混じった独特の感性ですね。

エンターテインメントとしては極上だと思います。

John Travolta が意外な役どころをこなしているのが驚きでしたが、Samuel L. Jackson、Bruce Willis、Uma Thurman ら主演級キャストを使いこなしているのも面白いところです。


  • 監督:Quentin Tarantino
  • 脚本:Quentin Tarantino, Roger Avary
  • 出演:John Travolta, Uma Thurman, Samuel L. Jackson, Bruce Willis


Watch on Apple TV

2024年11月2日土曜日

あまろっく (2024)

尼崎在住でもなく、尼崎出身でもなく、尼崎に思い入れも愛着もありません。
尼崎に住んでる友人に紹介されて観てみました。
観たい願望もなく、観てみてもええかな、という軽い気持ちで。

でも、しみじみええ映画でした。

全編関西弁で、そのナチュラルさも、すっと入ってくる感じ。

何よりも、主人公の家族が明るい。何でも明るく笑う。
主人公の父の口癖が「人生で起こること、何でも楽しまな」
鉄工所の社長をしているが、働く人たちも楽しそう。Positive Energizer やなあ。

「尼ロック」というのは、尼崎閘門のことで、尼崎の人も存在をあまり知らないらしい。
普段は大して何もしていないけど、いざとなるとみんなを力強く守る、そんなところが「普段はぐうたらなお父さん」みたいやなあ、というところから着想を得てストーリーにしたらしい。
確かに。
自分の人生、そんな父に見守られていた、ということに気づいて、主人公が再生する物語。

もう一人の主役が、二十歳の後妻。まあ彼女もポジティブ。
死んだ父母と後妻、幼馴染、鉄工所の人たち、近所の子供達。
ええ人たちに囲まれて再生していくのがええとこですね。
元気もらいました。

映画では尼崎の景色がふんだんに出てきます。運河沿いの桜が綺麗な季節です。
お城は復元された尼崎城かなぁ。
神戸のメリケンパークが出てくるのは神戸住人としては嬉しいところ。
結婚式場は、元町のセントモルガン教会らしい。

https://kansai-tourism-amagasaki.jp/amagasaki-locationnavi/ama_lock

ちなみに調べてみたら、江口のりこは姫路、中条あやみは大阪出身だそう。


  • 監督・原案・企画:中村和宏
  • 脚本:西井史子
  • 出演:江口のりこ、中条あやみ、笑福亭鶴瓶、松尾諭、中村ゆり、駿河太郎、佐川満男


Watch on Apple TV

2024年9月23日月曜日

テルマ&ルイーズ (1991)

Thelma & Louise

タイトルだけは知ってましたが、まさか30数年前の映画だとは。

Ridley Scott 監督で、Brad Pitt の出世作としても知られています。
Ridley Scott といえば "Alien"、"Blade Runner"、"Black Rain" の印象が強いですが、こういうヒューマン・ドラマ("プロヴァンスの贈りもの" も)や "Black Hawk Down" のような戦争モノも撮っていて、ホント名監督ですね。

"Thelma & Louise" は、女性の友人の名前、2人が主役です。特に若くもなく、一方は専業主婦という設定で、到底映画のテーマになりそうにない設定を映画にしようと思ったのがすごい。

ロード・ムービーで、人、特に女性の自立と解放が主題のように思います。
犯罪と逃亡を通して精神が解き放たれ、本当の自分を見つけていく。そう言うと硬い感じですが、犯罪と逃亡が次の犯罪を呼び、エスカレートしていく様がコミカルに描かれています。
ラスト・シーンは完全に解放されたところで、印象に残りますね。"Easy Rider" に匹敵すると思います。

アメリカ中西部が舞台で、カントリー・ロックで踊るシーン、畑の真ん中のまっすぐな道をサンダーバード・コンバーチブルで疾走するシーン、ロードサイドにポツンとある寂れたガソリンスタンド、砂漠と岩、大地の上の青い空と雲、いかにもアメリカ中西部という感じがたまりません。"Crazy Heart" にも通じるような。
英語は結構訛りが入っているらしく、確かに聞き取れません。
エンド・ロールの Glenn Frey の曲が中西部の感じに合ってます。少し Eagles マナーを意識したのかな。


  • 監督:Ridley Scott
  • 脚本:Callie Khouri
  • 出演:Susan Sarandon, Geena Davis, Harvey Keitel, Brad Pitt


Watch on Apple TV