2020年7月24日金曜日

Out of Africa (1985)

愛と哀しみの果て

1910年代の植民地主義ありありの貴族ドラマを、なぜ1980年代に映画にしようと思ったのでしょう。
アフリカ先住民の土地を奪い、安い労働力として使い、文明を押し付ける。
動物を狩り、象牙を売る。
今ではNGのことですが、80年代は気分的に許されたのでしょうか?

原作は日本語タイトル「アフリカの日々」どおりのようですが、その日々の中から、映画ではデニスとのラブ・ロマンスにフォーカスを当てています。
孤高のマサイ族のようなデニスをアフリカそのものに見立てたところは、優秀な映画スタッフのなせる技でしょうか。
所有を求める主人公と自由を求めるデニスは、ヨーロッパとアフリカの関係です。

サファリの真ん中でも、ディナーにはワインという貴族の生活様式と、植民地主義の思考には共感できませんが、アフリカの大地の自然の映像は素晴らしいです。
一面に広がる緑の大地、動物の大群、夕暮れの空に背の高い木のシルエット、襲いかかるライオン。

植民地時代がめちゃくちゃにした世界を元に戻せずに、今でも後遺症に悩まされています。

監督:Sydney Pollack
出演」Meryl Streep、Robert Redford

2020年7月22日水曜日

記憶にございません! (2019)

人間人生やり直したいと思うことはあるもの。
その気になればいつだって人生やり直せる、というメッセージはポジティブでした。

人とのしがらみ、こじれた家族関係、地位への未練、諦めた理想…
主人公は、石が頭に当たって記憶喪失になったことを契機に、人生を見事にやり直しました。
でも、記憶喪失はキッカケであって、本質ではありません。
何かのキッカケがないかと、言い訳を探すよりも、自分で一歩を踏み出そうよ、と言われてるみたいです。

コメディとしては、けっこう笑えました。コント的要素が強いんでしょうか。
こんな感じは確かに中井貴一なんでしょうね。頼りないところとビシッとしているところを演じ分けていて、貫禄です。

国会中継で放送を通じてストレートに妻にメッセージを言うシーンが、やっぱり一番印象に残りました。愛のメッセージは直球が一番。なかなか言えんけどね。
なかなかいい映画です。

監督・脚本:三谷幸喜
出演:中井貴一、ディーン・フジオカ、小池栄子、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市、吉田羊、斉藤由貴、ROLLY、濱田龍臣

公式サイト:https://kiokunashi-movie.jp

Murder on the Orient Express (1974)


オリエント急行殺人事件


Agatha Christie のミステリーの1934年のミステリーの映画化です。

ストーリーは知っての通り。
全員が容疑者で犯人、誰がではなく、みんな、という奇想天外の謎解きですが、Agatha Christie らしく、それほど込み入った内容ではなく、人生ドラマを散りばめた、エンターテインメントですね。
こういうのって、みんな結論を知ってるわけですから、どのあたりをハイライトにするんでしょうね?

Sean Connery に Ingrid Bergman が出演していますが、なんと助演。しかも最重要の役回りではありません。なんとも贅沢な使い方です。
そんな中で、Poirot を演じた Albert Finney の怪演が光ります。かなりの変人の雰囲気を出し、独特のしゃべり口。それでいておかしみがある。

殺人事件という一見恐ろしい物語ですが、何かしら陽気さをもたらす映画でした。

ちなみに、オリエント急行殺人事件は2015年にフジテレビがテレビドラマ化して放送してました。
野村萬斎の探偵は、かなりこの1974年の Poirot の影響下にあると思います。
オリジナルでは、多国語の違いが謎解きのキーになっているのを、方言に置き換えたりしてよく日本語でやったなと感心します。

原作:Agatha Christie
監督:Sidney Lumet
脚本:Paul Dehn
キャスト:Albert Finney, Sean Connery, Ingrid Bergman, Anthony Perkins, Lauren Bacall, Jacqueline Bisset

Clear and Present Danger (1994)


今そこにある危機


1992年の”パトリオット・ゲーム”の続編に当たります。パトリオット・ゲームで妊娠中だった子供は、赤ちゃんになってます。

“Clear and Present Danger” というのは、アメリカ大統領のセリフの一部です。
発言の意図を汲み取り、CIAは軍隊を動かした秘密作戦を実行していきます。
麻薬の取引と巨大な金が動く政治の動きと並行して、麻薬組織の下克上の動きが絡み、殺人、裏切り、襲撃、戦闘が発生していきます。
CIA内部の抗争と、大統領の思惑、一部の人間の単独判断、失策を表沙汰にしたくないための行動により物事がエスカレートしていき、フィナーレを迎えます。
Tom Clancy 的な映画でした。

見所はやはり、Harrison Ford のアクションでしょうか。基本分析官なので、自ら危ないことはしないはずですが、襲撃されたり、人の救出に向かったりと、所々で危険を顧みず大胆な行動に出ます。特殊訓練を受けてないはずなのに、よくまあ生き残れてますね。

原作:Tom Clancy
監督:Phillip Noyce
キャスト:Harrison Ford, Willem Dafoe, Anne Archer, Joaquim de Almeida, Henry Czerny, James Earl Jones

空母いぶき (2019)

沈黙の艦隊は画期的で面白かったですよね。
まあ、その路線といえばその路線。
漫画では中国軍との戦闘のようですが、さすがにそれでは防衛省の協力を得られなかったのか、架空の新興国が相手となっています。その分ちょっとリアリティが薄れ、フィクション度が上がっています。

テーマは「戦争」を避けるための「戦闘」です。自衛隊という特殊な軍隊を持つ日本のギリギリの努力のシミュレーションでしょうか。
そこには最前線の自衛隊員の判断の1つ1つが重要な意味を持ちます。大変な仕事やなと改めて思います。こんなのは普段、日頃から考えて、体に染み込ませてないと判断を誤るでしょうから。

主人公のいぶき艦長秋津は、いつも余裕の笑みをたたえながら的確な判断をしていくスーパーマンです。マスコミも利用した社会を巻き込んだ動きも見せ、戦略眼、理念、判断、理解、先を読む力に長け、結局映画の中ではフォルトはありませんでした。
そういう意味では人間味がなく、正直共感できるキャラではありません。悩みがないんですね。
主人公以外の人間は、悩み、迷い、その時々の事件に一喜一憂します。まあ、その対比が楽しみどころなのかもしれません。

我々は戦争を放棄します、と宣言しても、周りが戦争を仕掛けてきたら国を守るために戦争をするしかありません。安全運転してても事故に遭うのと同じです。
コスモポリタン的な平和を憧れますが、一方で民族的独立・文化の維持、経済的意図、地域解決主義、イデオロギー対立など、分派的な動きも否定できるものではありません。その危ういバランスの中に社会がある以上、最終的な暴力手段を持っておかなければならないんでしょうね。警察のように。
それと、みんなで安全運転しましょう、と啓蒙していくことでしょうか。民主国家でない場合、国体を維持するためにどうしても軍隊を必要としますので、民主化を求めていくこととイコールなのかもしれませんが。なかなか難しいところです。

原作:かわぐちかいじ
企画:福井晴敏
監督:若松節朗
脚本:伊藤和典 長谷川康夫
キャスト:西島秀俊、佐々木蔵之介、本田翼、佐藤浩市、中井貴一、片桐仁、斉藤由貴、市原隼人

公式サイト→ https://kuboibuki.jp

2020年7月5日日曜日

亡国のイージス (2005)

朝鮮人が自衛隊の幹部と組んで、イージス艦を乗っ取るという、無理やりな設定はどうかと思いますが、エンターテインメントとしては許せる範囲かも。

艦の内部や、ミサイル発射装置、戦闘機の飛行シーンなんかは、自衛隊の協力なしには難しいでしょう。今ならCGで描いちゃうかもしれんけど。
最初に自衛隊に協力依頼をした時は断られたらしい。現役の艦長が謀反を起こすような映画はけしからん、と。2回目は石破防衛大臣が許可したらしい。その代わりに艦長が副長になったようですが、そこに違いがあるの?

主人公は、真田広之演じる伍長です。人情味厚く、面倒見がいい、といういかにも軍隊の現場責任者らしい設定です。
艦のことを知り尽くした彼が、まさかの行動で東京を救います。ただ、その動機は、仲間を助けたいがため、ですが。
彼のような人をヒーローと呼ぶんでしょうね。

敵側の論理とシチュエーションはめちゃくちゃですが、それに対する主人公側の行動は共感できます。一人の力が強大な組織に対置し、事態が大きく動いていく。
自衛隊版の踊る大捜査線です。

原作:福井晴敏
監督:阪本順治
キャスト:真田広之、勝地涼、佐藤浩市、中井貴一、寺尾聰、原田芳雄他