2020年5月27日水曜日

万引き家族 (2018)

こんなに心を揺さぶられた映画は久しぶりです。

偽りの家族の話です。
6人家族ですが、みな血はつながっていません。
夫婦のように見えて、結婚はしていません。子供のように見えて、拾ってきた子供。
知らないおばあちゃんの家に住み込み、さらにおばあちゃんの前の夫の娘(血は繋がっていない)も一緒に住んでいます。

みんなその日暮らし。でも努力していい暮らしをしようなんて思っていません。
しかも善悪の区分がゆるい。
盗むことは平気で、子供にも万引きを技術として教えてます。
前の夫の家からお金をもらっていて、パチンコが趣味。1人暮らしと偽って年金をもらっています。
風俗のバイト。殺人の前科。隠し事と嘘ばかり。

最低レベルの暮らしで、ダメ人間ばかりですが、みんな人には優しいんですよね。
途中でスイミーの話が少しだけ出てきます。小さな魚が集まって、大きな魚に立ち向かうという。
家族って、元はそんなものだったのでしょう。人間は弱い動物なので集まって生活して、強い敵から身を守る。
弱い存在がいたわり合って、癒し合って。

前半はハッピーへと向かい、夕立、海水浴、花火で最高潮を迎えます。
一方、誘拐、解雇、息子の善悪の目覚め、とまずいことの伏線もいくつか重なっていきます。
そしておばあちゃんの死を境に反転し、息子の起こした事件で一気に家族は瓦解していきます。
最後は、家族から離れ、それぞれがそれぞれの道へ。

なんでこの人たちは一緒に暮らしてるんだろう。血のつながりもなく、金でもなく、体でもなく、打算でもなく、深い愛でもない。
少しの優しさといたわりか。
家族って、そういうもんだろ、と是枝監督は言っているようです。
現代の「普通の」家族は求めすぎているような気もします。血のつながり、愛、豊かな暮らし、教育、絆、正しさ。
そんなものなくても家族なんだと思うと、気が楽になります。

バラバラになった後にそれぞれの道へ進んだ家族たちは、家族であった時間に癒されて、新たな道へと進んで行きます。それでいいのだ。

サイドストーリーは、子供の成長。妹ができ、責任感が出てきて、盗むことが悪いことと気づき、父を超えていく。最初の頃と比べると、最後はすっかり大人です。寒い時期から始まり、雪で終わるから1年くらいかな。

リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林といった役者の怪演があっての映画かもしれません。細野さんのサウンドトラックもいいです。

監督・脚本:是枝裕和
音楽:細野晴臣
リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林、城桧吏、佐々木みゆ、池松壮亮、柄本明、緒形直人、高良健吾、池脇千鶴

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