大岡昇平の小説を初めて読んだときは、かなりの衝撃を受けました。
戦争小説なのにほとんど戦闘シーンは出てこず、ほとんど飢えの記述。日本が戦ってきた太平洋戦争とはこういうものだったのかと驚愕しました。
敵を倒すとか、作戦に勝利するとかと全く関係なく、自分自身が生き延びるための戦いがこれでもかというくらい書かれてありました。
小説なので、事実とは違うし、小説の主題に焦点を絞った書き様なので、これが太平洋戦争の全てではないとは思いますが。
太平洋戦争のターニングポイントとなったミッドウェー海戦が1942年。そこからなんと3年も負け戦を続け、無策に玉砕を強要する戦争指導者の無能さは悔しいばかりです。
この凄惨極まりない物語をよく映像化しようと思ったな、と思いましたし、心象風景が主になっている小説なので、かなり映像化も難しいのではと思います。
さらに、高等な文体での完成された文章は、映像が勝ることはできないと思うのですが。
塚本晋也監督は、20年も構想したらしいので、やっぱりどういう表現がいいのかすごく考えたんでしょうね。かなり映像がクリアなので最初はなんだかチンケな感じを受けるのですが、リアリティというより、言いたいことをストレートに言う、というスタイルなんでしょうか。あまりに凄惨で、吐き気がするほどでしたが、ぐいぐいと引き込まれる力がありました。
映画「黒い雨」でも、戦争から帰ってきた気のふれた人が出てきますが、この異常な体験は精神に異常をきたすのに十分だと思います。
小説はもう一回読むのには勇気と覚悟が要ります。
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