2018年8月19日日曜日

関ヶ原 (2017)

関ケ原の合戦は、日本人ならみんな知っている史実ですし、それを真正面から取り上げるのは勇気がいったと思います。
主役は、この映画でも主役の三成で、関ケ原は彼が作り上げた合戦の場です。
一方の主役は家康であり、小早川秀秋ですが、映画の中では島左近と伊賀者も準主役級です。

映画の中で三成は義を通そうとし、秀吉の利の世を正そうとしています。しかし戦乱の世は所詮、利でしかありません。僕は以前から戦国時代の武将は、今で言うヤクザみたいなもんだろうと思っています。全て腕力、武力にモノを言わせ、自分または自分の一家の利益を第一に考え、裏切り、騙し、殺しは何とも思わない。こんな人たちが領主という名前で自分の住んでいるところを治めていたら最悪だろうなと思います。理屈が通らないんですから。
最たるものは信長で、恐怖と報復、やられたらやり返せ、気まぐれとえこひいきで武力第一主義、権威に弱いので自分が権威になりたがる。
秀吉も三成も生まれてこの方戦争ばかりで、親分に見出され親分の言うことは絶対。秀吉に至っては、生き馬の目を抜く戦乱に次ぐ戦乱では教養を身につける暇もなかったでしょう。天下を取った後の姿は、映画ではほぼ極悪人に描かれていますが、本当だったんだろうと思います。家康にしても天下を統一して戦争のない世を、と願ったことは絶対にないでしょう。

こんな暗闇の世ですから、「清須会議」のようなコメディにした方が明るい気分になります。

2018年8月15日水曜日

三度目の殺人 (2017)

なんかこう、重いもやもや感が残る、そんな映画でした。
法廷サスペンスですが、サスペンスにありがちなスッキリ感はほぼありません。

犯人は、真実は?
ぼんやりとはその輪郭が示されていますが、それが本当かどうかは示されないままです。
最後に十字路でたたずむ弁護士。

それに、タイトルの三度目とは?
前科で人を殺している容疑者ですので、今回の殺人は二度目のはず。その前があったのか、それとも死刑に導いた司法のことなのか。最初の殺人も疑問符がつきますが、全容はほとんど提示されません。
主人公の弁護士と娘の関係も気になりますが、その先の道筋はありません。

小説の映画化ではなくオリジナルストーリーですので、是枝裕和監督の凄さを感じます。

Independence Day (1996)

観たのは何回目かです。Roland Emmerich のファンなんです。
ストーリーとしては陳腐。地球外生命の攻撃を受け、人類が勝利する、というもので、"War of the Worlds" と似た設定です。インヴェーダーも Alien バリに醜悪な姿をしており、単純な勧善懲悪モノです。
アメリカ人は、自由のための戦い、という自分たちの生い立ちが好きなんだろうと思います。南北戦争もそうだと言えますし、第二次大戦やそれに続く朝鮮戦争、ヴェトナム戦争、湾岸戦争などもそうでしょう。
大統領のスピーチ中の "you will once again be fighting for our freedom" という一節がそれを物語っています。

しかし、Roland Emmerich はそんなところで評価されるべきではないのです。その巨大さ、壮大さ、地球滅亡を予感させる破壊映像、そしてエノーマスな突然の危機のパニック表現なんですね。
"The Day After Tomorrow" や "2012" ほどではないですが、まあその前哨戦並にはなっています。

この陳腐なストーリーの中で救われるのは、地球を救う英雄は皆ダメ人間だということです。落ち目な大統領、NASAの採用テストに落ちた海兵隊パイロット、妻にキャリアを優先された通信技師、アル中の農薬散布パイロット。人はそれぞれ活躍する「場」がある、ということでしょうね。

A Good Year ―プロヴァンスの贈りものー (2006)

Amazon
"A Good Year" とはワインの当たり年のこと。
ワイン農場主になって、プロヴァンスでゆったりした人生を送りたいなあ、という願望が映画になった感じです。
主人公は成功したトレーダー。今ではコンピュータが処理しているのでしょうが、2006年当時は大量の人が電話で売り買いを指示しているのが時代を感じさせます。

Ridley Scott には珍しくロマンティックコメディですが、プロヴァンスのスローライフの情景が美しく、優しく撮られています。広大なぶどう農場や、シャトー、丘の風景、ぶどう作りに賭ける農夫一家、美しい隣人。まさに願望ですね。

コメディらしい、軽妙なやり取りが幸せさを演出しています。人生で大切なものはユーモアと笑顔なんだろうなと感じさせられました。