2024年11月2日土曜日

あまろっく (2024)

尼崎在住でもなく、尼崎出身でもなく、尼崎に思い入れも愛着もありません。
尼崎に住んでる友人に紹介されて観てみました。
観たい願望もなく、観てみてもええかな、という軽い気持ちで。

でも、しみじみええ映画でした。

全編関西弁で、そのナチュラルさも、すっと入ってくる感じ。

何よりも、主人公の家族が明るい。何でも明るく笑う。
主人公の父の口癖が「人生で起こること、何でも楽しまな」
鉄工所の社長をしているが、働く人たちも楽しそう。Positive Energizer やなあ。

「尼ロック」というのは、尼崎閘門のことで、尼崎の人も存在をあまり知らないらしい。
普段は大して何もしていないけど、いざとなるとみんなを力強く守る、そんなところが「普段はぐうたらなお父さん」みたいやなあ、というところから着想を得てストーリーにしたらしい。
確かに。
自分の人生、そんな父に見守られていた、ということに気づいて、主人公が再生する物語。

もう一人の主役が、二十歳の後妻。まあ彼女もポジティブ。
死んだ父母と後妻、幼馴染、鉄工所の人たち、近所の子供達。
ええ人たちに囲まれて再生していくのがええとこですね。
元気もらいました。

映画では尼崎の景色がふんだんに出てきます。運河沿いの桜が綺麗な季節です。
お城は復元された尼崎城かなぁ。
神戸のメリケンパークが出てくるのは神戸住人としては嬉しいところ。
結婚式場は、元町のセントモルガン教会らしい。

https://kansai-tourism-amagasaki.jp/amagasaki-locationnavi/ama_lock

ちなみに調べてみたら、江口のりこは姫路、中条あやみは大阪出身だそう。


  • 監督・原案・企画:中村和宏
  • 脚本:西井史子
  • 出演:江口のりこ、中条あやみ、笑福亭鶴瓶、松尾諭、中村ゆり、駿河太郎、佐川満男


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2024年9月23日月曜日

テルマ&ルイーズ (1991)

Thelma & Louise

タイトルだけは知ってましたが、まさか30数年前の映画だとは。

Ridley Scott 監督で、Brad Pitt の出世作としても知られています。
Ridley Scott といえば "Alien"、"Blade Runner"、"Black Rain" の印象が強いですが、こういうヒューマン・ドラマ("プロヴァンスの贈りもの" も)や "Black Hawk Down" のような戦争モノも撮っていて、ホント名監督ですね。

"Thelma & Louise" は、女性の友人の名前、2人が主役です。特に若くもなく、一方は専業主婦という設定で、到底映画のテーマになりそうにない設定を映画にしようと思ったのがすごい。

ロード・ムービーで、人、特に女性の自立と解放が主題のように思います。
犯罪と逃亡を通して精神が解き放たれ、本当の自分を見つけていく。そう言うと硬い感じですが、犯罪と逃亡が次の犯罪を呼び、エスカレートしていく様がコミカルに描かれています。
ラスト・シーンは完全に解放されたところで、印象に残りますね。"Easy Rider" に匹敵すると思います。

アメリカ中西部が舞台で、カントリー・ロックで踊るシーン、畑の真ん中のまっすぐな道をサンダーバード・コンバーチブルで疾走するシーン、ロードサイドにポツンとある寂れたガソリンスタンド、砂漠と岩、大地の上の青い空と雲、いかにもアメリカ中西部という感じがたまりません。"Crazy Heart" にも通じるような。
英語は結構訛りが入っているらしく、確かに聞き取れません。
エンド・ロールの Glenn Frey の曲が中西部の感じに合ってます。少し Eagles マナーを意識したのかな。


  • 監督:Ridley Scott
  • 脚本:Callie Khouri
  • 出演:Susan Sarandon, Geena Davis, Harvey Keitel, Brad Pitt


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2024年9月17日火曜日

糸 (2020)

平成って31年まであったんですね。だんだん年号を使わなくなったので、分からなくなってました。
平成元年生まれの主人公たちが、紆余曲折の人生を経て、平成最後の日に再会するという物語。
平成にそれほど思い入れがないので、なんで「平成」?って思ってしまいます。
思い返してみると、平成は僕にとってもいろんなことがあった時代でした。
社会人になって2年目で、年号が変わったときは東京にいました。失恋、結婚、震災、子供が生まれて、家を買い、システム更新、SAP、Benic、工場勤務....
思えば社会人人生のほとんどがこの平成、何ですね。もうちょっと大事にしないと。

13歳の時に出会った人と、お互い存在を意識しながら20年近くの人生を生きる、という、到底共感できないシチュエーションですが、人との関わりを抜きに考えると、13歳のピュアな初心忘るべからず。時折思い出して、自分を振り返る、と読み替えれば、まぁそうかもしれんな、と思います。

「つまらない大人にはなりたくない」と。

それにしても小松菜奈の美しさが際立っています。虐待、中卒、キャバ嬢、大学、沖縄、シンガポール、事業失敗、といった壮絶な人生は、小松菜奈の風貌がかき消してしまい、現実味がなくなるほどです。

ストーリーは中島みゆきの「糸」に着想を得たようで、重要な場面で何回か出てきます。ストーリー的にはどう着想を得たのか...
どっちかというと「ファイト」の方がストーリーに組み込まれてるかもね。同じ店で、友人や恋人がカラオケで歌うシーンが2回出てきます。初めは「もっと明るい歌歌えよ」と言う主人公も、サビの部分では共感しちゃってる。
「時代」のカバーも店のBGMで流れ、中島みゆき祭りです。


  • 監督:瀬々敬久
  • 脚本:林民夫
  • 原案・企画:平野隆
  • 出演:菅田将暉、小松菜奈、斎藤工、榮倉奈々、成田凌、山本美月、倍賞美津子


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2024年7月9日火曜日

すばらしき世界 (2021)

まっすぐで短気で喧嘩っ早い、そんな愛すべき人間が、刑期を終えて出所するところから始まり、程なく持病で死ぬところまでの物語です。

賢く立ち回れない者にとっては、とかく生きづらい世の中ですが、周りの人間の助けで、世界が輝き出した途端に死んじゃう刹那。

私生児として生まれ、施設に入るも母親に捨てられ、天涯孤独。
死んでしまえば何も残らない。切ないなあ。
でも、こんな人いっぱいいると思うんですよね。
何なんでしょうね、人間の人生って。

一度でも、この世界が「すばらしい」と思えたら、意味があるのかな。


  • 脚本・監督:西川美和
  • 原案:「身分帳」佐木隆三著
  • 出演:役所広司、仲野太賀、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、長澤まさみ


オフィシャルHP


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2024年3月24日日曜日

蜘蛛巣城 (1957)

シェークスピアのマクベスは知りませんが、なかなかよくできたストーリーですね。
もののけの予言が絡まってくるところはオリジナルにあるのかどうかは分かりませんが、結果もののけの言う通りに人間が動いていくのはなんだか深みがあります。

悲劇なので、ハッピーエンドとはなりませんが、そうだろうなというところに落ち着きます。

やっぱ三船敏郎は名優ですね。
旧主を殺害して城に入るときの、盟友に向けた戸惑いの表情や、徐々に気が細っていくところの変化なんかは、意外と繊細に表現してます。

効果的に使われている霧の発生、馬の疾走シーンの撮影方法など、映画技法がふんだんに使われています。

サウンドトラックがが悪いのか、早口だからなのか、何を言っているのか分からないところが多いのが残念です。


  • 監督 :黒澤明
  • 脚本 :小国英雄、橋本忍、菊島隆三、黒澤明
  • 出演 :三船敏郎、山田五十鈴、千秋実、志村喬

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デューン 砂の惑星 (2021)

Dune: Part One

Frank Herbert の「砂の惑星」を読むための予行演習として観てみました。

Lucas の「スターウォーズ」バリの誇大妄想の世界だったんですね。おそらく「スターウォーズ」にも多大な影響を与えたでしょう。
今回は "Part One" ということで、物語の前半を描いているようです。現在 "Part Two" が上映中ですが、そちらで物語は完結してるんでしょうか。Herbert の "Dune" のうちの第1作「砂の惑星」部分をカバーしているのかもしれません。

他の星で、大気と1Gがあり、言語が統一されているというプリミティヴな前提が、今となっては少し白けてしまいますが、そこをグッと我慢すると、まあまあドラマとしては面白い作りになってます。
サイエンス・フィクションじゃなくて、架空の世界を舞台にした大河ドラマと思えばいいんでしょうね。

皇帝とハルコンネン家とアトレイデス家の確執に、砂の民フレメンが絡む陰謀渦巻く世界。
過去からの因縁もあるので、理解しやすい設定ではありませんが、映画的にはそれを比較的分かりやすく表現してもらっていると思います。

Part One では主人公が窮地に陥り、最も厳しい局面に落ちるところまでが描かれていて、Part Two へのいい導火線になっているんですが、Part One だけだと爽快感は全くなく、重苦しい感触が残ります。

それにしても「ハルコンネン」とか「アトレイデス」とか「ベネ・ゲセリット」とかというややこしい固有名詞が連発される中、主人公の名前は「Paul」という最もありふれた名前の一つというのは驚きです。
もちろん Paul はキリスト教では重要な名前ですが、Herbert は読者に物語に入ってもらうために親近感を与えたかったんでしょうかね。

ということで、読書と Part Two はどうしよっかなぁ....


  • Director : Denis Villeneuve
  • Writers : Jon Spaihts, Denis Villeneuve, Eric Roth
  • Cast : Timothée Chalamet, Rebecca Ferguson, Oscar Isaac


https://wwws.warnerbros.co.jp/dune-movie/1/

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2024年3月20日水曜日

メメント (2000)

Christopher Nolan がアカデミー賞を受賞したのを記念して観てみました。
Nolan 監督の映画は以前『インターステラー』と『インセプション』を観たことがあるのですが、どちらも全く違う印象を受けました。
特に『インセプション』は展開が難解で、ヘンテコな映画だな、と思ったのを覚えています。

『メメント』はそれにつながるヘンテコな映画です。
ただし、SF的な要素は全くなく、現実世界での記憶障害という特異な状況を独特の手法で描いています。

原作は弟の Jonathan Nolan。
殺された妻の復讐劇ですが、ショックから記憶が10分しかない(ただし、以前の記憶はある)ために、行動に一貫性がなく、前後のつながりがありません。
はっと気づいたら、全く覚えのない場所、そこから毎回再開しないといけないというのはちょっと想像できませんが、認知症とかになるとこうなるのかなと思うと、身近に感じたりします。
そこに登場するサイドメンたち。麻薬売買と殺人の思惑が絡み合っていきます。
どの記憶のメモが正しくて、誰が嘘を言っているのか?
途中で挟み込まれるサミーの逸話が、実は主人公の記憶の取り違いであることが明らかにされますが、10分間の記憶の不確かさのみならず、確固とした過去の記憶の不確かさも問いかけられます。

物語の特異性を高めているのが、時間の流れです。
映画は最初の殺人から過去にさかのぼって記憶をたどるような流れになっています。
主人公の記憶はありませんが、見る人はその過去への流れを追体験するような形になっています。

映画の評判は口コミで拡がり、結果 Nolan 監督の出世作になりました。
ちなみにタイトルの「メメント」は「memento mori」つまり「常に死を意識せよ」のこと。
10分間の記憶が「今を楽しめ」ということなのか、劇中の多くの人の死のことなのか。深い意味は考えなくともミステリーとして秀逸な映画です。


  • Director : Christopher Nolan
  • Writers : Christopher Nolan, Jonathan Nolan
  • Cast : Guy Pearce, Carrie-Anne Moss, Joe Pantoliano, Jorja Fox, Stephen Tobolowsky
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