2022年10月10日月曜日

BlacKkKlansman (2018)

Spike Lee 真骨頂、黒人人権ものです。
重いテーマですが、適度なユーモアと適度な反骨精神をおりまぜ、さすがの出来です。

プロデューサーの Shaun Redick が Ron Stallworth の原作の映画権を買い取り、Spike Lee を監督に選んだという経緯ですので、Spike Lee が初めから撮りたかった映画という訳ではありません。
しかし、以前からの Spike Lee の映画を見てきた者として、プロデューサーはやはり Spike Lee がピッタリと思ったんでしょう。

Spike Lee は、いい映画を撮るプロの映画監督として、いい仕事をしてます。
最近 "Inside Man"、"Chi-Raq"、"Pass over"、"American Utopia" と立て続けに Spike Lee の映画を観ましたが、映像作家としての腕前にホント感心してます。意外とオーソドックスなんですね。さりげなくスタイリッシュ。

黒人とユダヤ人の警官が、KKKに潜入捜査するという、あり得ない設定の(しかし多分実話の)ストーリー。
黒人主義者の集会に潜入捜査を命じられた黒人主人公 Ron は、逆に白人至上主義者の組織への潜入捜査を試みます。そこで登場するのがユダヤ人の相棒 Flip。電話の会話は Ron が、実際に組織の人と会うのは Flip、という役割分担です。
KKKというのは反黒人であると同時に反ユダヤでもある訳で、どっちにしてもリスクだらけの捜査なんですね。そこにスリルが発生します。

警察内部は人種を超えて協力し合いますが、中には人種差別者もいます。
コロラドがどういう土地柄か分かりませんが、警察はアメリカ社会の縮図なんでしょうね。

KKK の仲間内では嘘だろ、というような人種差別発言の連続ですが、そこは極端な思想の持ち主たち。一方で黒人主義者の集会では革命を叫び、過去の黒人少年リンチを語る。
憎悪が憎悪を増長しているアメリカ社会の深刻さが分かります。
舞台は1970年代ですが、巻末に出てくる映像は2017年の白人至上主義者の集会の模様です。
Donald Trump も映像に登場しますが、彼と彼の取り巻きが推進した「分断」は、過去のぶり返しに他ありません。
この映画は当時の政権と社会風潮に対する痛烈な批評でもあるわけです。

映画の最後では、恒例のスライド・カメラが発動され、「おっやっぱ出た」と思いましたね。

  • 監督:Spike Lee
  • 脚本:Charlie Wachtel, David Rabinowitz, Kevin Willmott
  • 出演:John David Washington, Adam Driver, Laura Harrier 


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