2023年12月10日日曜日

花束みたいな恋をした (2021)

この歳になってこんな映画を見るのはどうかと思いましたが、坂元裕二脚本ということだけで見てしまいました。

予想していたのと全く違って、タイトルどおり純度の高いラブストーリーでした。
2時間使って、恋愛の始まりから終わりまでを描いています。
最初に別れた後の二人が出てくるので、映画の最初から恋愛の終わりを内包してストーリーは展開していきます。

で、全部見終えた感想は「そうだよな」て感じ。
恋の最初もそうだし、終わりもそう。
同一化の夢を見て恋が盛り上がり、結局同一化は幻想だと思い知らされて、「どうでもよくなる」。
坂元裕二の恋愛観でしょうか。
映画の最初で二人が言います。「恋愛は一人に一つずつ、一緒に分けられない」。これがこの映画の本質でしょう。
確かにそういうところあります。

「推し」「ファン」も同じ構図ですよね。対象に自分を重ねて同一化を試みる。「推し」「ファン」の対象が遠くで実態が分からないのに対して、恋愛はすぐそばにいる対象なので、幻想に気づきやすい。悲しいけど。

この映画では恋愛以外もいくつかのサイドストーリーがあります。
一つはモラトリアム。こういう時期はみんな経験してるので、共感を呼ぶんでしょうね。そして就職してみんなつまらなくなる。この映画ほどじゃないけどね。

もう一つはサブカル。音楽、小説、映画、漫画。この映画で出てくるのはほぼ知りませんが、唯一きのこ帝国だけは分かりました(Awesome City Clubは聞いたことあるけど、音楽は聴いても分かりません)。2014年の出会いの時に「クロノスタシス」をカラオケで一緒に歌い、2019年の別れの時に解散したというエピソードが出てきます。
と言っても、僕も解散後の佐藤千亜紀のソロから知ったんで、後出しですが。

まあでもこういった青春恋愛映画見るのも悪くないですね。もう観ないかもしれませんが。
僕の人生も悪くなかったなと思えます。


監督:土井裕泰
脚本:坂元裕二
出演:菅田将暉、有村架純


https://hana-koi.jp

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2023年7月8日土曜日

ザリガニの鳴くところ (2022)

Where the Crawdads Sing

ザリガニは鳴きません。ザリガニ鳴き声(Sing)が聞こえるような、湿地帯の奥深く、ということでしょうか。

ノースカロライナの湿地で暮らす、家族に見捨てられた一人の少女。
人との繋がりはほとんどなく、街の人からは「湿地の娘」と蔑まれます。
人と関わらずとも、自然が友達であり、先生であり、保護者でもある、という特殊な環境。
それでも二つの恋をし、気にかけてくれる人に助けられ、湿地の自然の本を出版することも叶いました。
そこに起きる、恋人の変死。映画はそこから始まり、法廷劇を通じて彼女の半生が振り返られます。
彼女に偏見を持つ街の人が捌かれるべきと主張する弁護士の弁護もあり、無罪を勝ち取り、幸せな後半生を送ります。

暴力を振るう父と重なる暴力を振るう恋人。
ザリガニの鳴く湿地帯は彼女自身であり、その自然から学んだ知恵。そこに迷い込んだ恋人。
衝撃のラストを迎えます。

ミステリーなのか、ラブストーリーなのか、自然小説なのか、いまひとつはっきりしないところが魅力なのかもしれません。
非常に特殊な環境の主人公だけに、共感しづらいことこの上ないのですが、孤独という意味では現代に生きる私たちを描いているのかもしれません。

原作は、同名の2018年のベストセラー小説、作者の  Delia Owens は動物学者で、70歳の時に出した処女作が本作だそうです。これも驚き。


  • Daisy Edgar-Jones as Catherine "Kya" Clark
  • Taylor John Smith as Tate Walker
  • Harris Dickinson as Chase Andrews
  • David Strathairn as Tom Milton
  • Michael Hyatt as Mabel Madison

  • Directed by Olivia Newman
  • Screenplay by Lucy Alibar


https://www.sonypictures.jp/he/11155000


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2023年5月14日日曜日

セブン・デイズ・イン・ハバナ (2012)

7 dias en La Habana

キューバのハバナの日々。

月曜から日曜までの7日間を1話ずつ別の監督が撮った短編集です。

リゾート地としてのハバナの面はあまりなく、どうしようもない日常をただ綴っています。
ビジターとしてのハバナも3話で描かれていますが、まったく観光的ではないですね。

いくつかの短編では、音楽が重要な役割を果たしていて、やっぱキューバは音楽よね。

この中では映画祭に招かれた映画監督とドライバーの友情の芽生えを描いた火曜日が好きです。ドライバーがトランペッターで聴かせるためではなく、自分のために友人達とジャム・セッションをやっているのがカッコいいですね。


  1. El Yuma "ユマ" (Monday, Benicio del Toro)
  2. Jam Session "ジャム・セッション" (Tuesday, Pablo Trapero)
  3. La tentación de Cecilia "セシリアの誘惑" (Wednesday, Julio Medem)
  4. Diary of a Beginner "初心者の日記" (Thursday, Elia Suleiman)
  5. Ritual "儀式" (Friday, Gaspar Noé)
  6. Dulce amargo "甘くて苦い" (Saturday, Juan Carlos Tabío)
  7. La fuente "泉" (Sunday, Laurent Cantet)


https://eiga-watch.com/7-days-in-havana/

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2023年3月18日土曜日

真珠のボタン (2015)

チリの先住民への迫害と、ピノチェト独裁政権下の圧政を描いた映画です。
ドキュメンタリーになるんでしょうか。

南北アメリカ大陸はご存知のように、ヨーロッパからの入植者によって、先住民たちが住んでいた土地は奪われていきます。
先住民狩のようなものも行われていたようです。
今ではもうほとんど先住民の血を引く人はいません。
真珠貝のボタンは、先住民は使っていませんでした。ボタンはヨーロッパとの交流と迫害の歴史を思い起こさせます。

真珠のボタンが発見されたのは、海から。
海にはもう一つ暗い歴史があり、ピノチェト政権下で何千人もの人が殺され沈められたと言うのです。拷問の後、鉄道のレールにくくりつけられて、軍のヘリから海に捨てられました。

チリに生きる人たちにとって、忘れてはならない自分たちの歴史。告発と言うよりは、記憶にしっかり刻みたいということでしょうか。


監督・脚本:Patricio Guzman
制作:Renate Sachse

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2023年2月13日月曜日

サタデー・ナイト・フィーバー (1977)

僕はこういう青春を過ごしていませんが、青春の閉塞感をうまく表していると思います。

小さい時にテレビ映画で見た時は、ディスコやケンカ、セックスといった描写についていけなかった覚えがあります。
それでも社会現象になりましたからね。

舞台はブルックリンですが、愛2の舞台はマンハッタンでしょう。
ほとんど出てきませんが。間をつなぐブルックリン・ブリッジが効果的な使われ方をしています。

ペンキ屋で働くイタリヤ系のトニーは、将来のことを考えられないまま、土曜の夜のディスコで踊ることが生きがい。踊ることがうまいトニーはディスコではキング扱い。
ダンスコンテストのパートナーに選んだマンハッタンで働くステファニーに影響されて、少しずつ将来のことを考えるようになります。

John Travolta の出世作ですが、彼の踊りが素晴らしい。ピンと張った背筋と重心の低さが美しい。Bee Gees の曲と Travolta のダンスだけでも名作です。


  • 監督:John Badham
  • 脚本:Norman Wexler
  • 原作:Nik Cohn
  • 出演:John Travolta、Karen Lynn Gorney

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2023年1月28日土曜日

マネー・ショート 華麗なる大逆転 (2015)

The Big Short

The Plan B Entertainment は Brad Pitt のプロダクション。本人も出てます。
Brad Pitt で印象深いのは「マネー・ボール」ですが、本作は「マネー・ボール」の原作者 Michael Lewis が書いた「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」"The Big Short : Inside the Doomsday Machine" の映画化になります。原題は "The Big Short" ですが、多分「マネー・ボール」にかけて「マネー・ショート」にしたんでしょうね。

”Short" は空売りのこと。債権が下がり局面の時に、買って売るのではなく、売って買う手法です。

サブプライムローン危機の時に、危機を先んじて見抜き、空売りで莫大に儲けた人たちの話です。Scion Capital、FrontPoint Partners、Brownfield Capital という3組のファンドとそのマネージャが主人公ですが、いずれも接点はありません。

MBS、CDO、CDS といった専門用語が飛び交い、3組の群像劇であることも絡まって、ストーリーを理解するのが難しい映画でした。原作は量に限度がないのでもっと分かりやすいのではないかと想像しますが、2時間の映像にまとめるというのは難度が高かったんじゃないでしょうか。
分かりやすくする工夫として、時折解説が挟まっています。女優 Margot Robbie、料理人 Tony Bourdain、歌手 Selena Gomez となんとノーベル賞受賞の行動経済学者 Richard Thaler 教授まで出演して難しい話を優しく解説してくれてます。出演者の一人 Ryan Gosling の積み木の例えを入れたのもだいぶ工夫したんでしょうね。
1回見ただけじゃ理解できなくて、間に WEB の解説見て、もう1回見てなんとなく理解できるようになりました。
それでも、Sion Capital の Michael Burry (Christian Bale) が開発した金融商品 CDS (Credit Default Swap) がなんなのかよく分かってません。

最後は「儲かって良かったね」じゃなくて、多くの人に不幸をもたらした金融業界への問題提起、という色彩になってます。


  • 監督:Adam McKay
  • 脚本:Charles Randolph、Adam McKay
  • 原作:Michael Lewis
  • 出演:Christian Bale、Steve Carell、Ryan Gosling

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